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2006’04.20・Thu

扉への路 4

 高慢・色欲・怠惰・嫉妬・強欲・暴食・憤怒
罪と謗られるその先に真理はある。
 それに捕われて尚、危うき境界線を外れる事なく渉からこそ人間は真理を求めながらも闇に墜ちる事なく進歩し続けてこられたのだ。

 今、逆巻暗闇と大罪を越え、現世の影より濃く、罪より鮮かに浮かびいずるこの路の真実が開かれる。

 これは現実ではない。
 これは幻ではない。

 過去に熾きたそれは影。
 未来に魅かれるそれは喰われる太陽。

 総ては因果の流れにあり。

 路は扉に向かって続いてるのではなく扉から続いている。
亡者の手が腕が、かつて存在た光ある場所へと伸びている。隙あらば現世の血肉を求めて足掻きたてる。

 炎の…、その力を奪われてなお残る力。
命と言う炎が消えぬ限り、命を喰らい生きる流れにいる限り、この灯は消えぬ。この火は絶えぬ。
自身から吹き出た炎が正にこの命の火だと気付くのは今更と言うべきか…。
 この身が生きる為にいったいどれだけの命が犠牲になったと言うのだろう…
命は命でしか支えられない。一つの命は数多の命でなければ生きられない。
死は誰かの生になる。だからこそ死者は生前の肉と魂と精神を持って生き返る事はない。この流れに背かぬ限り約束は未来で果たされる。

 陽炎が辿ってきた路がはっきりと浮き出てこの輪になった流れに逆らい扉へ翔ぶ蝶を蘇らせた。
何時か見たイシュヴァールの黒蝶であり、そうではないかもしれない。ただ分かるのは扉も又、一つではない。
 黒蝶は扉まで行っては翅をもがれ、脚をもがれ深淵へ墜ちる。
その度に闇が濃くなる様で、業を孕み深みを広げる様で、すべてをもがれた蝶はひよわな人間そのものに見て取れる。
 入口は違っても逝く着く先は無残な死だけが待っているのだ。

 無限と続く漆黒の闇が永遠と罪の嘆きと死の痛みを、生の恨みの呪祖を吐き続ける。
白い闇が淡々と訪れる黒蝶に死を与え、謳う声が呻きと重なり水面に広がる波のごとく映る影をうねらせる。

『来ないものか 来ないものか
陶酔のその時は
僕は我慢に我慢をしたおかげで一生忘れない
怖れもそして苦しみも天高く舞い立った
ところが悪い渇望が僕の血管を暗くした
ほったらかしの牧の草
生えて育って花が咲く
よい草も悪い草も同じ草
すごいうなりを立てながら
汚い蠅めが寄りたかる
来ないものか来ないものか陶酔のその時は―――』

 黒い闇が深々と死を迎え入れる。
 巨大で無限なこの闇に呑まれてしまえば無力な黒蝶よ、それも楽かと命の輪を見上げればソレを焼こうとする限りなく青い炎が静かに燃え盛るのを知り、性を放った一回一回の死があの部屋を訪れた際仕込まれた宝珠と反応していでたる影に気付いた。
ずくりと甘い痛みから思いだす。そう、内壁を擦りながら奥へ、奥へと簡単には出ないようにずっと攻められていた。その内にある紅い珠が鼓動と同じ、うねりと同じ速さで脈を打つ。
 総てはこの怪異の為。
 総てはこの奇跡の為。
 ここはあの壁に描かれた練成陣そのものではないか。

『待ち受けている魂よ
一緒に呟こうよ
空しい夜と烈火の昼の切ない思いを
人間的な願望から
人並のあこがれから
魂よ つまりお前は脱却し
そして自由に飛ぶという……
あらゆるものに縛られた
哀れ空しい青春よ
気むずかしさが原因で僕は一生をふいにした
心と心が熱し合う
時世はついに来ぬものか!』
   <ランボー詩集 地獄の一季より>

 幾千・幾万の声がずんと重く頭の芯まで響き耳鳴りどころか目眩がする。捩り込まれた悪意は悪夢から吐出した力を黐、臓器を締め上げあらゆる痛覚を荒らす。皮肉にも五体の感覚が戻りなんとかもう一度振り返り見た白い闇も黒い闇も、音も無く燃え完璧な円を描いているのを知る。
その橋渡しをしているのは総て人であったモノだ。が、どれも後少しのところで繋ってはいない。
 まだ命が足りない、死が足りない、炎が揺らめく。

――アカ いホの オ が足リ な・いイ

 総てが闇のこの世界で何者かが密やかに、そしてはっきりと……
これは警鐘。これは啓示。これぞ罪!!

――ミよ、コレを魅よ。

 決して許される事のない第八の欲望の形がこの国の四方を炎で囲む。
―――タナトス
破壊欲動、死の本能。
 誰の中にも潜む最大の罪を形にして炎が揺らめく。

「罪に煽られた炎こそ魂の有り様。」
――おめでとう。君は選ばれた存在なのだよ。
「糞が、もったいつけねぇでさっさとてめぇが魅た扉とやらを教えろっ」
――ホノオの称号を与えられた者のこれは運命。
「すばらしい!すばらしい火をお持ちね!大佐。」
――産まれたその瞬間からこれは決まっていた事なのだよ。
「何処に扉があるんだよ?ん?」
「羽化は完璧なはずだが?」
 ぐるり四方から、罵声に似たあの三人とは別に低く且、穏やかな声が更に諭す様に頭に響く。

――よく、ここまで育った。君こそが紅い炎。
見たまえ、あの黒い炎を。
あれは私の憤怒の火だ。
そして、あの白い炎。アレも私の育てた炎だよ。
アレこそ絶望。

 絶望?憤怒…―――知ってる。私はアレを知っている…。

「いかないで………大佐…」
 炎に、否ソレはもう記憶も感情も燃やし尽くすこれこそ業火。激情に流され言葉にならぬ程の怒りは総てを、血の一滴を、この痛みですら逃るる事は敵わない。
 魅入られ命の火から抜け落ちそうになる身体を誰かがしっかり掴むは一人や二人ではない。しっかりと掴まれた腕のその向こうで誰かの溜め息混じりの飽きれた声が聞えた。

「ヤレヤレ……まさか死んでからもお前さんを助けるとは…な…」

? そんなっ

 祈るその人は我が手で墜としめた部下。
引き寄せる懐かしい顔はあの日から時間を止めたままだ。
 迷いと後悔、懺悔の念がひどく蘇孵った路の残存を歪がませる。

 この命を延々と受け継がせて来た先人よ、戦場で散った友よ、思い半ばで逝った大切な人よ…、どんなに魅かれ魂が奪われ様がここから先には逝く事はない。永遠と罪を許される限り。そこが自分の存在世界な限り。
僅かな細いこの路を歩き続ける限り。

そうだ。私は…
私の名は――――

「はーっ、はっはっはっ!だからニンゲンは駄目なんだよっ」
「嫌だわ…影像がボケてきたじゃない。」
「自我が目覚めたとたんがコレか……なんたる脆弱!」

 罵りの言葉はもう届かない。何に引きずり込まれたのかそこから意識がぶつりと切れた。

「どうされます?」
 床に手を付き三人が恐れ敬う様に頭を垂れる。彼らの創造主にお伺いを起てる為に決して付く事のない膝を折る姿は神への祈りに似ている。

――苦悩に矛盾、葛藤……罪の誘惑…アレにはもっとたぎってもらわねばな。

「陽炎は予定通りに。」
理の中、物質世界では限界の壁がある。それでも………
――紅い炎は難しいぞ?

 火傷など何時ぶりだ……するりと手中から飛び立ったホノオに確かな手応えを感じて下から沁み出る声がからかうのか楽し気だ。
 問い掛けに部屋の主が険のある顔をスッと緩ませた。
「開けさせましょう。幸にもあの女も扉に立った様ですし。」
 彼等の後ろには男女対の裸体が横たわっている。体に懸かった負荷が痙攣を起し浮き出た血管が波打ちその苦痛を。血が、涙と同じ軌跡を描いて、爛れた皮膚が、求め伸した手が、夢ではないと叫びをあげている。
 些か損傷はしているがあの様な体験をしても尚生きて還っているとは……。
「体の保持はどーすんだよ?これ以上の力だと維持できねぇぞ?」横槍を入れる兄弟の言う事は正しいかもしれない。陽炎でさえ現世での肉体は亡くした。―――だが…。
「記憶を細工して頂けたら…いかようにも。」
 再び頭を深く垂れた。ホノオの二つ名を与えたのはどうやら当りの様だ。もっと煉れば陽炎以上の力と混沌が育つはず。
そうだ、もっと混乱を。もっと怒りを。もっと罪を!
細めた右眼が微かに笑っている。それと同調したか沈黙も笑っていた。

――まかせよう。

 コレも我が意思。
一度炎となり路も後僅かで繋がる今、誰もタナトスは止められない。この国にいる総ての人間にソレが一気に増幅し内に向ったならば…!

「ハッ!ハッハッハッハー クックッ…ヒィーヒッヒッヒッ……地獄の再来だっ!」
一人が感きわまって狂ったかの様に肩を否、全身を震わせながら笑い出した。
 残るは砂漠のみ。神は地に墜ちて人が人を殺す最高の時が満る。抗え人間!光を持った人間の絶望程甘いモノはない。そして罪を繰り返すのだ。
黄昏時から夜へ、闇の時世はもう、すぐだ。
「混沌を。」
「我らがお父様に。」
「楽しいパーティの幕開けだ。」

 涙が止まらない。夢にすら逢えなくなった愛しい人よ……もうすぐだ。
これは人間だった時の最期の証。熱き心のあった証。
だが今は疲れた眼球の生理現象にすぎない。
 顔など忘れた。
 声など覚えていない。今、ここに立たれてもそれが何者かすら分からない。何の罪で裁かれているのか……それすら記憶えていない。――そう、心はもう…
―――ない。

 冷気を孕んだ長い息が独り言と共に漏れた。
「私のホノオよ……おいで…。」

<END>
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Categorie扉への路(F・A小説)
Genreアニメ・コミック Theme鋼の錬金術師

2006’04.12・Wed

扉への路 3

「扉への路」過去ログへはこちらから>>>>>>


錬成陣に書かれた円は=世界であり、木・火・水・土・金からなる点を結ぶ図形こそがその世界のあり様を示す。複雑な構築式は真理を求める者には理解する為にある。が、人としてそれはけっして解いてはならぬ神への領域でもある。
 今宵も、幾多の贄の魂と肉を屠った幾重にも成る陣は血でこそ繋る完璧なる世界であり、宇宙であり、人を示す。

 水、炭素、アンモニア、石灰……
足りない。それだけではまだ足りない。
 魂は21gだとその昔、学者が実験の成果を世に出した事がある。
―――我々は人間ではない。この21g足りないばかりに我々は人ではない。
ふと子供に読み聞かせたピノキオが頭に浮んだ。あれは最後に人間になったのだろうか?死んだ息子の変わりに作ったピノキオの話はよく知る囚人と同じだ。くぐつに魂を付着させるのは子供の童話からも想定済とはなんと業の深い事か…。

 考えるのはやはり構築式の事だけだ。今度は何が足りない、何が間違っていた…。我等より遥昔から神に挑みし諸行は今だ成功した試しがない。生ずるのは形なきモノか化け物のだ。
リバウンドも、一つの大国が滅んだ昔話も、人を創ろうとした代価にすぎぬ。だから人を創るは禁忌だと、古より実しやかな話はそこかしこに隠れてる。『―――時世はついに来ぬものか』
そう、我々の諸行は人には災いであろう。
現在も、過去も、それはその愚かな血肉は糧になる。
 そして鍵は羽化を始めた。
 今度はどうだ?何処まで行けた?――何を見てきた?
 椅子から立上がり燃え盛る駒に触れたのは錬成陣の中でぴくりとも動かなくなっていた儀式に犠牲になった女ではないか。
―――ほう?
以外な人物の動きに眉が上ったのはここにいる皆がだ。三人三様の表情をしたまま動きを止めた。
戒めの楔は熱で熔けその身体からは熱気が吹き出し、蜃気楼のごとく歪みを造り、せわしない揺らめきの中立つその姿は、白金の髪を靡かせ、凍付いた碧を湛えた瞳、何かの紋様を浮かび上がらせた肢体は、輪郭がまだ定まらず空中に溶けそうではあるがどう見ても男だ。
 この飛び入りの客がどう動くのか?静観する事に決めたのか一人は薄笑いを浮かべたまま壁に背を託し、一人はその豊満な胸に興奮を隠し、一人は僅かに開いた眼を二度閉じたまま微動だにしない。

 やや、不思議気に自分の手を見つめるそのまなざしはよく知る闇と同質であり、恐らくは何も考えが生まれていないのであろう。
やや間を空けて燃え盛る炎に誘われるかの様に近付いた。何処とも説明がつぬ場所が痛みに眉がよる。血が太股を伝い落ちたは間違いなく女の身体の証拠であり、久しぶりに手に入れた身体が上手く馴染めないのか時たま酷くブレをお越して下半身を同じく、男と女の上半身がはっきりと分れる。
表情を失っているそれは何かの神話で出てきそうな男女対の神獣のようでもあり、欺なす悪魔のようでもある。
 駒は近付いたそれが誰か分かっていない。息も絶え絶えに助けを求める様に手を伸ばした。

 あれだけいたぶられ続かれたのに止まらない。この炎の様に止まらない。熱気で息が出来ない。余りの熱さに今、何処に存在のか分からなくなる。徒もすれば視界が絶たれた分、またあの闇に呑まれたかの様なこの部屋の空気は吹き出る炎より危険だと焦りとえも知れぬ恐怖に苦し紛れに手を伸ばした方向に何かが存在る。
 目が効かない分よく分かる…暗い水底に映える白い………それも闇だ。同質の触れてはならざる者。
「はっ…」
甘美な恐怖が唇に走る。実際にはまだ達してない身体がもどかしくて切なげに痛みを伴いながら下腹部に広がる。背中に受けた傷がひどく疼いて身体は今にも焼け溶けるか、中から砕け散りそうな痛みを伴っているのに死に隣接する苦しみが堪らなく快楽を求めて急かすのだ。
早く、早く、この痛みを忘れる為の強く激しい刺激が欲しい。欲しくて堪らないと。
 火なら最初から撞いていた。炎なら最初からたぎっていた。―――来るか?
問われ伸ばしたその手を取った瞬間からだ。これが主の口付けならばどうだっただろう?いや、観ている。見えなくとも分かる。知らない二人は同じ眼をしていたがあの人は違うのだ。奥に渦巻く暗闇に触れられずとも貫かれてると感じるからこそ、動悸はさらに早まり屈辱感にさいなやまれながらも崇拝してしまう己に何度も警告したはずだ。こうなるのは分かっていたこではないか…。それもすぐ熱で溶けた。
 見えないもう一つ加わった視線が皮膚から吸収され血管を伝って血から奥から声にならない程の疼きを絶え間なく産みだす。
 すでに熱くて堪らないのに触れてくるそこが熱い。相手が限りなく熱い。
熱で焼かれた唇は血と肉の味がし、死の影を濃くする。
始めはただ唇を重ねるだけからやがて激しく舌を吸い口内を舐め回し舌が奥へ奥へと浸蝕し溶け出た何かが魂を絡めとらんと奥へ捩り込む。
じりじり焼かれるのを厭いもせずその手は愛しそうに身体に触れているくせにその眼も顔も死人の様だ。
 計り知れない熱で揺らめきの中交わるのは一度きりの生の証。破滅への助走。

 あれもただ焼かれるだけの存在と高を括っていたから手は出さなかった。冷酷な薄笑いを浮かべ死の匂に酔う。
「?」
 表情のない男の顔が有得ない角度でここの主に向いた。
微動だにしなくともやや開いた眼が僅かに驚きで揺れた。
「コれで ハ たリ ナイ  。シっぱ イ ダ。」

「失敗だ。」
 唯一、今の光景を観ている右眼がすっ…と細まる。
――その台詞は昔この場所で聞いていた。
そう、もうずっと若い時だ。次々と積まれた死体に白衣を着た何人かがぐるりと囲い言っていた。
おそらくは実験でもしてたのだろう。――人を殺すのはいつでも人だ。
 一つの大いなる感情が吹き出そうになり口をキツく閉じ眉間に深く縦皺をよせ怒りを押さえたその顔は正に吽顔。
早く焼かれしまえと言わんばかり四番目の兄弟が腕を組み替えた時それはおきた。
 眩い光がこの地下室を瞬間覆う。その光は錬成反応ではあるのだが余りにも強い。
駒の熱が瞬時に吸われ短い、魂斬る叫びと性を放ち床に落ちた。
大きくブレをおこしていた女と男の姿は僅かな揺らめきを伴いながも紋様かと思われたそれは火傷や切り傷であり、痣をもはっきりとさせた男へと案定を果たした。
 炎を。力を吸い取っただと?酷く顔を歪ませたのも四番目の兄弟だけだ。二番目の兄弟は自ら来たる獲物に舌なめずりをしている。
どうする?
誰が動く?ピリピリ肌を刺す緊張が走る。

「あーはっはっはっはっ!」
 そんかな中、底抜けに明るい芝居がかった笑い声が響き渡り誰もが笑い声の主に目を向ける。
左手は額に、右手は腹に。おかしくて堪らないのか閉じた目尻からは涙がうっすら出し、背中まである髪が笑い声と同じリズムで揺れている。
「こいつはいいっ!傑作だ!!」
なぁ?と話掛けた相手は崩れ落ちた駒にだ。無論、返事などあろうはずもない。そんな相手にまだおかしいのか背中をバンバン叩いたかと思うと髪を鷲掴みにし、一気に片手で引き上げた。自分より身長がある分膝が曲がりハの字なった脚には力なく垂れ下がり白濁した液が垂れている。
ん?ちゃんと立てないのか?なおも笑いながら右腕を絡ませ自分の胸にその身体を起き左手でクッとその顎を上げ問う。なまめかしくも赤い唇のその色は血。余熱を持ってその身体は今なお熱いのに先程から瞼一つ動かない。
 死んだか。
アレの力はそう言うモノなのだ。
 高く明るい笑い声はその眼が開いた瞬間、低く、周囲の闇が一気に吸う息に引き込まれたかの様に冷気を孕み、蝋燭の仕業なのか影が別の生き物かの様に壁を這う。
「はははは…」
顔はまだ笑っているのにその両眼は来訪者を真っ直ぐ睨んでいる。
「覚えてるぜ。その顔!
――思い出したぜ。……その力よっ。」
口調は低く唸り激しいが、駒に這う舌は優しく、愛しく、滑らかに、頬を寄せ、髪を撫で唇に中らぬ様舌を這わすのかと思えば、急に癇癪を起こしてみたりと、その顔はコロコロ変わるくせにまなざしはソレを捕らえたままだ。
 その身体はされるがまましだれかかり、その愛撫に心地よく酔っているようであり、ただの糸の切れたマリオネットそのものだ。
「その身体はまだ使えるのよ。」
身体をくねらせ、困るわ~と言わんばかり二番目の兄弟が窘めるがその態度はどう観ても笑っている。
それが死のうが生きようが関係ないのだ。儀式は失敗した。いつもの事だ。
舌を胸まで這わせてその動きが止まった。
俯いたまま肩を震わせまるで泣いてる。
しばらくの沈黙の後寄り目にして舌を出した無邪気な顔がばぁ~!と明るい声と共に上がった。
つまらん。いつもの悪ふざけだ。取り立て反応する事ではない。
「ふん。相変わらず笑わないな~  じゃあ、これはどうだ?」
指を一本立ててくるっと輪を書くとぴたりと駒の胸を指す。
「こいつ―――生きてるぜ。」
「!……何?」
部屋の主が音をたてて椅子から立ち上がる。もう一度言うのが面倒臭いのか指した指を耳に入れ、ぽいと駒を手放す。
そのまま崩れ落ちた駒はどうみても死体。何よりもアレに力を吸われたのだから。
「そうか…還ったのか――陽炎の…」

 陽炎。
それが彼の二つ名だ。かつての儀式の犠牲者でもある。
「あそこから還って来たか…」
有得る。有得るかもしれない。彼はそう育てられてきた。この駒も生きて還っているのなら、100年に一度とうたわれたその力ならば何かは興せる。
 我らと同じ化け物と呼ばれたその力ならば!

 理解かるか?我々を化け物と呼ばれる様に貴様のような人間を魔人と言うのだよ。
―――その力は我々に近い。

 何時の事だったか…、その力を求めて手を差し出した事があった。
 いるのだ。時たま人の中に生まれ出るのだ。異形の力を持つ者が…。そして虐げられる。過去も、未来も、現在も。ここに存在瞬間も。
「お前にはここは地獄だろう。」
ん?問い掛けと言うよりは独り言に近い。
身体にある傷は戦場の傷であり、愛されなかった虐待の傷。力があるゆえの…。

「お前なんか産まなきゃよかったよっ」
 ヒステリック叫ぶ女が陽炎に立ちはだかった。実際はもっと若いのに酒のせいでかなり荒み老けて見える。あばらや背骨が捩れ浮き出た姿が悍ましい。
 これは悪夢。
かつて、自身の体だった時に繰り返されていた悪夢。口汚く罵り叩かれ、殺されかけた――それは現実。逃げる様に軍に入ってもなお繰り返される暴行。無茶苦茶な配属。それでも見つけた小さな希望も喜びも裏切りの前に砕け散った。
それでも、それでも…それでも!人は常に彼を裏切った。光はいつも遠い。

 今は実の母を目の前にしてもその無機質な瞳は変らない。もう、ソレで傷つく事はない。悲しむ事も泣く事も悩む事もない。心はもう―――ない。
 腹を貫かれ血反吐を吐き生き絶える姿を見下ろす事などない。

『来ナイモのか 来ないモノカものか
陶酔のソノ時は
僕は我慢ニ我慢しタ
おカゲデ一生忘れなイ
怖れモソして苦しミモ
天高く舞い立ッタ――――』

 誰かがお父様はお喜びだわと高笑いがおこった。
「へぇ~今度は殺せたじゃねぇか。」
にいっと笑う四番目の兄弟が血をこすり貫かれた腹を塞ぎながら泣き虫の人間が好きで、好きで、恋しくてたまらなかったあのガキがねぇ~と笑いながら立ち上る。
「本当に…面白いよ。人間ってヤツは――よっ」 

 小さな火種は大きく育ち炎になった。総ては決められた奇事をなどるだけか…もう、眼帯は必要あるまい。
返答など微塵に期待してはいないが眼帯をゆっくりと外しながら最後の人間らしい質問をしてみた。
「闇のはらからで蝶は飛んでいたか?」

 謳う陽炎に調和せて部屋が、否、空気が震えた。鮮明になった陽炎の傷から痣から血が吹き出る。
 三人の闇も謳に反応して床を伝い、壁を天井を、装飾してある硝子の彫像や椅子・テーブルいや、過去の苦悶の後である爪痕・血痕ですら残さず飲み込む。
この部屋も又、一つの練成陣なのだ。

 我らが創造主が創られたもう一つの扉への路が現世に繋る――――――

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Categorie扉への路(F・A小説)
Genreアニメ・コミック Theme鋼の錬金術師

『扉への路』1はこちらから!今回も”腐”要素多めです


 

花鱗が月さえも香しく藤色に変える春の宵も、勇々しく伸びる木々のごとき緑を映す夏の月が猛る夜も、黄金色の皇らめきが総てを照しだす秋の満る月の輝きも、凛と澄み切り凍えそうな湖のごとき蒼を満々と讃えた月さえも凍える暗闇も………すべての時間が身体を擦抜けてゆく。

 ここは…何処だろうか?
 身体が静な炎に包まれいた。
 体が熱い…。
 内側からふつふつと煮えたぎりながらも恍惚とした悦びを伴いながら、何故自分がここに存在するのか……。
 自身が放つ炎で周りが徐々に見えてきた。
 考えも衝かないそれに声も出ない。

 幼い頃意味も分からず聞かされ恐れた母の戒めの言葉を彷彿とさせる。――これが地獄と言うものか――
 回りを激しい怨嗟の渦が吹き荒れている。一つ一つが恨みを口にしているのに耳には悲鳴に似た激風にしか聞えない……耳が痛い。否、頭が割れそうに痛い。
―――逃げなければ。
‘恐怖’が堰を切り追い立てる。途端、一つ、一つ、がにゅっと伸びてその顔を露にする。
 観よその怒りに焼かれた険しき顔を!未来永劫続く苦痛に歪む顔を!突然の不幸に疑惑と妬みが支配する顔を!
 かつては幸せであったであろう、穏やかでかったであろう痕跡は塵程にもない。失いし者を求めて自ら禁忌に触れた者も、巻き込まれた者も、巨大な力で握り潰されそうで、痛みと怒りと餓えの凄まじさたるや真面であった頃の精神も魂もない。土気色した性別もつかぬ顔が体を孵せと呟いたのを切っ掛けに風が止んだ。すべての眼がこちらを魅ている。この闇に浮かぶただ一つのこの灯を。
「ひっ」
 幾つもの亡者が追いかけて来る。息を切らせながら走る背に闇が芹上がって脚が縺れる。――これは悪夢だ!!
 自分が見てるのだろうか?それとも誰かの狂気に飲み込まれたのだろうか?
 黒い手が次々と伸びて来た。まるで狂気がそのまま形を成してあるモノすべてを飲み込む気のようだ。
 今走ってるこの路はすべて屍で老若男女問わず体の一部だけのがやけに多い。手や指はまだましだ。もうどこの部位か分からない肉片は喰い散らかした後の様で何時かの戦場を思い出す。

 ここはそれより尚悪い。

「あっ!?」何かに足下を捕われ体を襲い来る闇に貫かれた。
溢れる悪意が総身を駆け巡る。この顔も胸も足も腕も…我が、我が、と喰らいつくす。
 肉は食いちぎられる。骨は砕ける。血が吹き出る。これはなんたる苦痛!なんたる悲しみ!そして理不尽すぎる痛みか…これは総じて怒りに変る。徒もすれば動けぬ程の失望に、徒もすれば総てを巻き込む絶望に、されど血が吹き出る度に昏い何かが苦痛を麻痺させふるふると沸き出る悦びに、煮えたぎる快感に変わる。それはあの地下室で叩込まれた快感であり、その吹き出た悪夢はいつかみた主の影そのものではないか。

 ――――そして今、自分は違う場所に存在する。正確には違う層と言うべきか…。喰われたはずの肉体は魂を核に再生し続ける。それは月の満ち欠けの様に未来永劫約束された拷問だ。遥か上では抜け殻の自身が黒い闇に飲み込まれるのを見ても何処か他人事のようで虚無に駆られているのに今だじんと奥が熱い。
 ここも先程と変わりはない。
 屍の路は前いた場所からまだ下へ続いている。―――下?いや、上だろうか?もう、よく分からない。急立てる様な恐怖がなくなっただけで、ここに自分が存在する意味も、畏れも、身体の疼きも、消えたわけではない。襲い来る亡者と奥にある何かに何度も何度も墜とさる。起立した乳頭は捩りを加えながら限界まで引っ張られ、根元を絞られなぶり続かれた肢体を黒い塊が幾度となく切り裂いては喰らい尽す。
 その都度炎は大きくなり、閉じる間もなく喘ぎを紡ぐ口から涎が汗と脂で妖絶な滑りを身体に垂らす。イク度に薄皮が剥れる甘い感覚と電流を流された様な甘美な刺激に、ともすれば魂までもが剥れそうだ。

―――何が見える?

 誰かが静かに押し寄せる小波のように問い掛ける。
ハレルヤ讃えよ夜を
ハレルヤ集えよ咎人よ。崇めよ神を、我らが父を讃えよ。讃えよ。
 儀式は始まった。この灯に集まれ咎人よ。いざ真理の扉へ導け!

――何が…?
 怒りと言う名の官能の炎に焼かれる自分だろうか?憎しみと言う名の漆黒の闇に呑まれた自分だろうか?絶望の名の元ばらばらにされ路の一部になる自分だろうか?
 吹き出ていた炎は墜ちる度大きくなり輪郭から炎で熔けて、消え入りそうなのは己か…炎か…
 爆音に近い滝の音で分散しそうな意識があわゆく止どまった。
 夥しい程のそれは血の滝である。路はここに続いていたのか…否、更に向こうに扉がある。これだけの屍を洩ってしてもそこへ辿着くにはまだ足りない。血はそれ等のあまたたる咎人のものだ。遥か昔より禁忌を破った罪深き者のなんと計り知れぬ程の多さか。体の一部で済み現せにいれた者は奇跡に近い。

 …主がお呼びだ。部屋に居た従者二人が影より浮き出てまるで今までの亡者と変わりがない。伸びる手を振り切り尚も逃げるが路はもう先がない。

―――お戻り下さい。大佐…




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Categorie扉への路(F・A小説)
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!!腐女子要素を多分に含みますので苦手な方はご注意ださい

 


 私達は人間だわ。
二番目に生み出された兄弟が妖艶に微笑み近くにある花を手にした。ウソぶいてるにも程がある。と四目の兄弟が軽やかに笑う。足下にはもぎ取られた花が踏みにじまれ猟の後の獲物のごとく散乱し、彼らの奥にある闇をさらに深くあれと血のごとき朱を花びらに呪いを掛けていようだ。
 何百年も歳もとらず人ならざる力を持ち、闇に生き、暗きゆえに探し物が見つからぬと苦悶の末忌まわしき深淵に祝福され昏き焔より生み出されたのが自分である事は最初から知っていた。ここにいる者は皆呪われてるのさ。まだ見ぬ兄弟が残した言葉。
 最期の兄弟として私は陽の下で育ち周りと同じ時間を共有し正式な方法でこの国の総統にまで上りつめた。―――何の造作もない。決して崩れる事がない積み木を重ねるがごとく…そう、すべては確実に、計画通り事は進んでいる。
 周りの眼を欺く為結婚もしたし子供も養子として引き取った。
 軍にいて最前線で指揮を高めるも、かの目的で動くも、歳をとる言う事は周りが煩くなる言う事だ。
かつての若き日を駆け抜けた同僚も心から愛し慕う家族も忠誠を誓う部下も深き闇には一糸の光も差し込むことはない。
 そう、くだらぬ馴合いなどいつまでもしてはおられぬ。細部までも意のままに動かす為にも若い手駒が必要だ。
 人を統べる為に私はここに存在のだ。
 右眼にある印が疼く。闇のはらからで一度だけ魅た真実が突き上げる。
―――人がかの扉を創りたもうたのだ。

 「どうして欲しい?」

 言葉とは便利だ。それが事実であろうがなかろうが口から費え出たものから真偽も見えてくる。
 羞恥でそむけた顔だが眼とは言葉より饒舌だ。期待に潤んだ喜びを隠しきれていない。
 身体は何よりも魂の入れ物として従順だ。いかに鞭打ち嘆きを口にしようとも、烈火のごとく屈辱に眼をむけようとも、悦びである証を出さずにはいられない。
 人は死とは醜く恐ろしいモノだと恐れおののいているにも限らずこの一回一回の死にこうも悦びの声をあげ快楽に溺れるとは…
 死線を共有し共に帰ろうと誓いあった一人が我が身可愛さに逃げ出したのを思い出し小さな笑いが喉元まで芹上がった。
アレは正義の名の元、皆になぶり殺された。
泣き叫ぶ女・子供を笑いながら殺す者、死者から金目の物をはぐ横から人が人を殺していく、我が子を、肉親を、恋人を、失った者がその身体の一部を持ち彷徨う所を襲った者も少なくはない。
 そこにはあらゆる苦痛と果てない絶望に途絶える事なく愚行へとつき動かす憎悪があった。この混沌こそが真理!
これが人の真実の姿ならば!人は…あらゆるものを裏切る。だからこそ呪縛は必要だ。
その痛みを甘美に変え盲信の苦痛と悦びの血を流せば容であるはずの身体が魂を凌駕する。
 いや、これこそが魂と身体の完璧な繋がりになるのだ。そしてもっと!強く!悦びを得る為ならば人は精神のありようを幾らでも換える事が出切る。
…そう純粋にそれだけを求める為に、初めて恋を守る様に…!人は人を裏切る。
 これこそ怒りだ。混沌たる世界を統べる力こそ怒りなのだ。

 鎖に繋れなぶり続けられてきた身体がじわりと汗ばむ。今日はまだ一度も入れては貰ってない鞭の柄が幾つもの傷後がある背中をなどった。太くミミズ腫れしたものはもう何日も前のものなのに今だ赤みを残して盛り上がっている。
古い傷が白く残ったまま何時かの快感を物語って敏感に反応し、強張らした身体が…唾を飲み込んだ喉が…ジクジクした痛みを纏いながら恋しくて、恋しくて、たまらない少年の様にそれを欲している。

―服従愛―
 その眼に映るのが自分だけだと思えるからこそ、どんな羞恥にも絶えてこれたのだ。
 ここ何日か任務が忙しく主の影すら見てはいない。事実それを考えるには忙しすぎたはずにも拘わらず身体が疼いて仕事に支障をきたしぐらいだ。部下に随分と勘ぐられてもどこか上の空な自分がいた。
 いや、夜になく昼なく一つの事を思っていた。突然襲って来る発作の様に痛みを伴った痺れを身体が思いだしては消して消える事ない炎に身が焼かれる。
 もうそれしか考えていない。
 痛い視線も、冷酷な言葉も、甘美な鞭も…。
ゆるりと屠られながら自分が何かに違うモノに変わりそうな予感に眠れぬ夜が続いた。魂もがざわつく…
 やっと呼ばれたこの地下室で慣された身体がさらに焦らされる。
それでも…
 今、執着しているのがこの身であるならば何度でもここに存在る意味がある。

―憤怒―
 この若き独楽が焦がれ、沸き立つ程に欲しているその源が怒りである事に気付いていない。
 肉の呪縛は済んだ。
 夜となく昼となく快感に溺れた身体は絶え間ない疼きと共に意識の連続を完成させたのは目の下のクマで見て取れる。それは憎しみに身を焼いた証だ。
恨みと言う名の怒りがなければこの部屋に来ない。
 今夜それが鍵となり、肉体を代価にかの扉は開く。
 そう、今宵こそは…

 
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Categorie扉への路(F・A小説)
Genreアニメ・コミック Theme鋼の錬金術師

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