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2009’01.26・Mon

明けぬ夜 ②

                                                         ①はこちらから


「イクってか?」

 気配もなく現れたのは最初に影から出でた青年だ。
無造作に掴まれた髪が引き千切られた辺りで白濁した汁を飛ばしてしまった。
「ハッハッハッハッハー!!
残念だったな~俺でイって・ん?」 底意地悪のが彼の本性に違いない。
 楽しくてしかたない。そんな嘲りに羞恥心から面を上げれない。 「あーアイツはやめとけ
ソレ以上触って貰えね~ぞ?俺にしとけっ
なっ」 若い外見通りの軽いノリで誘いをかけているのにゾッとする程の冷たさに逃げれない。 「へぇ~痛いのがいいのか――」 コレか?無遠慮に指を閉じたままの扉を無理に割り入る。 「…ッ」 痛い。もしかしたら伸びてた爪が引っ掻いたかもしれない。チリチリした皮膚が引き連れる痛みと、只闇雲に動く指は痛いだけだ。 「なんだ?コレにはえらく反応してたのによっ」 苦痛で歪み無言で耐える顔が当たり前過ぎて、背中に大きく走ったみみず腫した後を指でなどる。 「ヒッ………やっ」 「フン!なるほど?」 明らかにキュッと絞まったソコに数回動かしただけで途端尖端がヌルヌル濡れてきた。 「ヘェ~痛いのがいいのは鞭だけです。ってか?」
大錬金術師様は随分なご趣味で。小馬鹿にした口調に言い返す事も出来ず叛けた顔に先程飛ばした体液を塗られた。 「ハッ!どうだ!?旨いか?」 まだ付いてる指を口に入れられ、謀らずも味わされる目に合う。 「フーグウウッウッ」 「噛まなかったな?ククッ――ご褒美だ」 只力任せの侵入だ。いきり起つソレが考えていたより太すぎだ。メリメリッと内側から引き裂かれ、何度も奥を突かれ脳天まで衝撃が連打する。 頭の内から叩かれて口から出てくるのが悲痛な喘ぎ声
違う――――誰かが遠くで泣いている。

「…て…やめて…やめて下さい…お赦しを…」 小さな声で赦しを請う。 泣けば余計打たれるのは早くに覚えた。
 鳶色の髪に蒼い眼、異様に色素の薄い肌が周りと違うから鬼っ子と物心付いた時から苛められ、少し大きくなってからは質の悪い親方に拾われ毎日の様に打たれた。
父親と名乗る者から金で買われた。殺されそうになり逃げ出した。逃げ込んだ村外れのあばら屋で、薬の調合をしていただけなのに何故か魔人と揶愉された、錬金術師に匿って貰えたがそれも銅銭一枚で役人に売られた。 抵抗する気持など最初に殺されていたから
父親に犯され、村人に犯され、役人に犯されても、何も思わない。何も痛くはない。――― 生きていない。 最初から生きていない。 私はまだ始まりの記憶のまま。
 痩せっぼっちで、ボロボロで。
星すら見えない真っ暗な夜、木の虚で、寒さに震えながら雨宿りをしている―――――ソレから先は私じゃない。
 私じゃない。

 こんな風に無理に侵入られた時は凄く疲れる。だったら心だけでも―――逃避が巧くなったのは何時からだろう。
 嫌な事があれば何時も夢だと思い込むことにしていた。………私じゃない…
か弱い少女と重なるのはあの時の眼が、眼が、眼が、
あまりにも印象的で忘れられないから……
深く闇に堕ちそうな程………深く
 だから…

「私じゃない……」

 小さく呟いた言葉に闇雲に動いてた腰がやっと止まった。
「正解!
オマエじゃない」
 「…えっ……?」 先ずは混ぜてしまえとばかりに内壁を何度も擦られ、かき回されて無理矢理何度も達されたから血と体液でグチャグチャだ。
ズルリ抜かれてももう、感覚がない。頭の中まで無茶苦茶な動きに麻痺したようだ。
 何を云っているのか分からない。そんな呆けたままでいると「この辺だな」と、背中に手がつぷりと痛みもなく沈んで何かを引き出された。
ソレだけでも怪異なのに、背中からドロリ出てきたのは半透明の膜に包まれたみずぼらしい少女だ。

「――ッ」 あの師匠の部屋に居た少女だ。 儀式で犠した少女。 あの雨の日に、誰も…生きている者が誰もいないはずだった―――雨の日に現れた少女。
 あぁこの少女こそ、雨宿りしていたあの日から明けぬ夜を歩いて来た少女ではないか!
今度は本当に息が出来ない。苦しい。
急に世界が狭まったようだ。ブクブクと足掻きたい手すら融けてなくなりそうな―――総てが融けそううな――――そんな喪失感
 時間の彼方に置いてきた真実がゆっくり眼を開けて此方を視ている。
 怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。その暗い瞳で、視ていた。視ていた。視ていた。視ていた。
 彼方に置いてきた深淵の住人が灯の光に誘われて闇から抜け出そうとしている。

「オマエは影だ!
このガキが創った影だ!」 楽しいなと、笑い声がもはや違う次元から聴こえるようだ。

 寝起きの悪い幼子がやがて光を受けて、ユルユル動いた手が膜を破りまだ少し付いた血を拭う。
それはまるで羽化。卵から孵る小さな命のように、儚くあどけない仕草に惑わされそうな愛らしさに似つかわしくない痛々しく傷付いた、痩せた手が大の大人である自分に近付き優しく頭を撫でてくれる。
 あぁ…あの小さく狭いフラスコの中を思い出して私が融ける。
 もう…全部融けるから………繰り返し繰り返し、貌が出来ては又繰り返し。
そんなにかき回さないで欲しい。
フラスコに居た。私はフラスコに居た。
 世界は気泡で包まれていた。

「………辛かったの…
寒くて寂しくてひもじくて……みんな、みんな意地悪で………」
 泣いても許して貰えない。殴られても許して貰えない。
壊される。壊されていく。
 こんなの私じゃない。
 「アナタ――――アタシにならない?」
挙げるね。全部、全部挙げる。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 ごめんなさい。アタシ…
 私が私に謝る。
「いいんだよ……私…やっと
やっと雨があがった…………」
 躰を貪られ、心を貪られ、力を貪られきた。 常にひもじく常に暴力に怯え震えていた雨が止む。
 木の虚から顔を出し満天の星空が路を照らしてくれる。
影は木の虚に置いて行こう。フラスコに過去と影を置いて、さあ歩こう。この路の先に日が昇る。
 あの儀式は世界に殺され続けてきた二人の祈り。
 歩いて行く為の祈り。

 もう……思い出せない程……前の話だ。
アレから二人は別々の路を歩いて来たはずなのに…。過去は水底に置いてきたはずなのに…。どうかそんなにかき回さないで欲しい。折角沈んで綺麗になった水が澱むから―――水底に沈んだはずの私が私を視ている。

 「そう、…やっと…やっと歩けたの……
ありがとう」
バイバイと小さい手を降り、目の前で少女が瞬く間に大人に成長した。
程よく焼けた肌、鍛え抜かれた四肢、強い意き思を持った眼、気難しげな眉、ソレは、ソレは、その人は、

「大佐。大佐の背中は私が守ります。」 そう約束を交わした―――

「―――中尉!!」
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Categorie明けぬ夜

2008’09.14・Sun

明けぬ夜 ①

 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
雨に打たれながらひたすら謝る。 泣いているのがわからないぐらいぐしゃぐしゃになった顔を視る者など誰もいないにも関わらず声を押し殺し発作的に叫びそうなこの心をひたすら押さえ謝る。 もう…
もう…生きている者はいないのだろうか?
――――死んでしまった。
みんな死んでしまった。

何時の時代も国を総権力も富も手に入れた者が望むのは不老不死―――― この時代の王も又歴代の権力者と変わらなかった。 目を付けられたのは総てに通じる錬金術師 その力は王の為にその術は王の為に―――逆らう者は死あるのみ。
 力のある術師はある時は鬼と呼ばれた。ある時は魔と呼ばれた。
そしてもっとも力の強い錬金術師は魔人と呼ばれたこの時代。 ほそぼそと片田舎に住む錬金術師は目立った力はない。ある日は医者となり、ある日牧師となり、愛を解き節約を教え勤勉を重んじた。 「先生!」
教師もしていたから村の子供達はみなこの錬金術師の教え子でもある。一人がその学力の高さから弟子になっていた。
 その頃から名君と誉れ高い王の噂が一変していた。
「……又徴兵があったらしいよ」「あの村は牛が全滅したらしいじゃないか…」
 最近は悪い噂しか聴かない。天候もここ何年かおかしいせいで飢饉だ流行り病だと、何かよくない前触れではないか。魔人が出たせいだとか。
とかく噂はとりとめない。

「先生…先生は行かれるのですか?」 とうとうこんなへんぴな田舎にも都からの呼び出しがかかってしまった。行かねば死。行っても生きて帰った話は聞いた事がない。
「死は人を畏れさし。老いは人を狂わす。
王も只の愚かな人にすぎないらしい………な…」 私もだがと小さい笑を溢す師匠に、小さい頃かの癖で先生と呼んだ青年が困惑した眼差しを向けるしかない。かける言葉を無く爪がくい込む程握った拳が己のが無力に震える。

―――死んでしまう。行かねば魔人を出したと、こんな小さな村でも王都が許すワケがない。
先生は死ぬ気だ。
村を救う為……信ずる正義の為に……… 「私も………私も行きます!」
物心ついた頃には独りだったから、先生は私の親だと譲らぬ弟子に師匠が許したのはずっとやっていた研究も気がかりだったせいかもしれない。
王都に着いたのは寒さが一段と厳しいある冬の日だった。
 優れた錬金術師が集まった街での強制された研究。 それでも青年には素晴らしい話であった。元来の物覚えのよさと先の見えた我が身の行く末に今までの術を誰かに話ておきたい。そんな思いも重なり不老不死の研究以外に身につけた知識は彼の地位を変わらせていた。

 「先生……それでも人は不死にはなれぬのですね…………」 すっかり老いた師匠と会うのは何年ぶりだろうか?こっそり講師をしてくれた他の錬金術師達も役にはたたなくなったと分かった途端その命は刃の露と消えた。
―――何故逃げなかったのか。何故あらがわなかったのか。何故その最期に微笑んだのか…………
 同じ微笑みを称えたまま答えぬ師匠。

――――死は恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい恐ろしい。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
 王は何時も云っている。死ねば総てを無くしてしまう。 そうだ。と思う。
 かつて研究していた事もあった。あのなにもない村の片隅で
 あのフラスコに置いてきたアレはどうなったのだろう?

「!
先生それは?」 ソレは何時からいたのだろうか?此方を視る二つの目がまるで、まるで、陳腐な魔の例えに出てくる木のお化けの様な、暗い何もない虚のような…… 「女の……子?」 痩せっぽっちでヤケに色素の薄い肌のせいで其処にいるのが不思議なくらい儚げな―――無意識に伸ばした手が払われてハッとした。 「さぁ――おいで――――」 少女を呼んだその名は――その名は―――――「先生!!」 フラスコのその中につけたその名前
もう帰る事はないからと供給を止めてきたはずだ。第一アレから何年たっている?
「そんな…」 ボロボロになった足に割れた爪。歩いて来たのか?イヤ馬鹿な
そんな馬鹿な 王が求め続けた答えが歩いて来ただと? あれだけ命を喰い潰した答えが―――
「先生!
何故です?何故アレが此処に!?」
聞いて何を馬鹿な事を口走ってるのかと否定して欲しい願いも虚しく
世界が グラリ世界が歪む――――

何故だろう?何故だろう?何故だろう?何故何故何故何故何故
人は老い死ぬのだろう? 白く何もない世界で叫んでみた。 此処なら誰憚る事もなく本音を云えるし、弱音も醜態も晒せれる。本当の自分がここならば。

「よう――――来たのかよ?」
足元の影が動いてしなやかに伸びる腕がヌッと沸き上がった。
闇を称えた瞳が笑って残りの脚を影から切り離した。 何時でも……何時だって答えが出る訳がない。 失敗するかの?又間違えてしまったのか? 苦悩のままにおのが命を断ってしまったあの人があの人があの人が 私はどんなに知識を得ても答えを出せない。出せない。出してはいけない。
不死は罪とまで云ったのは光に包まれた貴方ではないのですか?
この世界を創ってしまった私をなじった日もあったはず――― この影は何時から住みついたのか……やけになれなれしい態度に付き合いの長さが伺い知れる。 「その若さで称号付きだろ?
分かるぜ~?なんだ?又やっかまれたのよ」
 笑った顔がグニャリに歪んで紅い口が甘言の蜜を垂らしながら首筋を這う。
 創られた世界が崩れそうな勢いで畏れがせりあがる。 「早く…
早く早く早く――もう………ンッンッ」 喰いつくしてしまえ。そんな貪る口付けと口内で暴れる舌が奥へ奥へと伸びて 吐きそうだ。
 触れられた処から肌が粟立ち、まるで悪いモノでも塗られた感覚に本気で暴れているにも抜けない。押さえ込まれた身体はピクリともしない。 「誘ってきたワリに―――ノリが悪いな?ん?
思い出したのか?」 何が?問われた意味も解からず見上げたソレがゆっくり溶けていく。 代わりに自分を押さえ込んでいるのが初老の割に鍛えた身体が軍服に身を包んでも見て取れる広い胸板、白髪の混じった髪を隙なく後に撫で、眼帯してるせいで余計に厳しくなった左眼が此方を視ているのに何も写していない。何も―――

間違えたのです。―――あの時も
あの少女はホムンクルスだったのだろうか?それとも禁断とされていた人の合成獸だったのか………
忽ち王に知れる事になり国を挙げての術は時間がない王の焦りから、我が身可愛さと保身しか考えぬ官僚の愚かさから。
アレが不死だと誰が云った?誰が―――
笑って死んだのは未来を殺された術師達だけだった。
あぁ…知っていた。 本当は知ってた。自分を売り渡した村人さえ憎かった。あの人が云った。
家族さえも忌むべき眼でいたと。隠れたせいで親を殺され引きずり出され石を投げつけられた。アァあの人が云った。あの人があの人があの人が あの閉ざされた世界でひっそりと、教わったのは―――憎しみだったではないか。 国を一瞬にして滅ぼす程の強い憎しみ。
最後の一押しはこの手だった。 死んでしまった。みんなみんな死んでしまった。

あの儀式は失敗だった。

私は間違えてきた。今も――――
「――――閣下」 「思い出したのか―――」 左目にやっと自身の姿を見て取れた。なんとみずぼらしい。映った姿はあの時と変わらない。アレから何も変わっていない。

大国を喰った儀式は望まぬ力をくれた。
永遠を。 何度生まれ変わっても消えぬ記憶 消えぬ罪

「ハッ………アァッッ」 不意に伸びた手が胸の突起をキリキリ引っ張って甘い痺れが走った。それだけで条件反射で腰が動きそうになる。 罪は痛みで痛みは生きている証で―――――――喜びなのだ
そんな錯覚に惑わされて又同じ間違いを起こしてしまった。 なのになのになのになのに。後悔しているはずなのに。

この快楽は毒だ。

謝っても許して貰えないこの身を。愚かにも過ちを繰り返すこの身を。この身を。
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か

「切り裂いて――――」 「――――よかろう」 血と脂を吸って黒光する鞭が乾いた音と共に空を切り背中を裂いた。 この勢いだと痛いより熱さが圧倒して、衝撃で、息も思考も瞬間止まる。 死んだ。ひ弱な人間ならこの一撃でショック死だだろう。
衝撃が打たれた背中より後頭部に直接にきて軽くパニックに陥る。 怖い。本当は痛いのは怖い。これで死ぬかもしれない恐怖を孕んだ痛みが怖い。
だから津波の如く荒れ狂った傷みを生きている実感と喜びが包んで、溢れそうな快感に身体を震わせる。
小刻みに奮えた歓喜の息を長く吐く。生理的に出た涙が途中枝分かれしながら伝うのが、たまらなく因美なあざないで、身体の隅々まで感覚を鋭敏にさせるから、空気すら愛撫と同じ甘い縄。
 たまらない。たまらなく感じる。
 体温と汗が一気に沸き上がって酔いそうだ。
「――――それから?」 瞳の奧に焔が揺らめいている。
 けっして消えぬ灯が。
 闇に棲むその身を焼き付くしその眼に映る総てを焼きはらう。凶暴で危険なその灯が。暗き水底を映し出し静かに狂えと揺らめいている。 ――――それからどうしていたのだろう? 失敗した術を総指揮していたのは‘大錬金術師’の称号を得て王と直接話す事を許されたこの自分だ。
―――殺してしまった。みんな殺してしまった。 死に怯えた愚かな王も傲慢な貴族も哀れな召使いも、親しく話していた果物売り、勤労な老人、幼い子供赤子すら………いや、犬も牛も、馬も、鳥も草木でさえ 殺してしまった。 惨劇の後から降り出した雨の中で生きているのは自分独りだけ………のはず―――だった。

「はずだった―――」 「――――はずだった」 柄で上げられた顔は傷みで寄せられた眉が深く額に皺を刻んでいるのに、二人で繰り返した睦言にあらがえない。
「切り裂いて」 身体が熱い。傷みに焼かれて熱い。熱い。 打たれ痕が紅く浮き上がり――――熱い。 ねっとり汗ばんだ身体が浮き上がらせつつあるもう一つの熱。 キリキリ顎にネジ込まれだした柄の端を物欲しそうにみたせいでもう一撃。
 「ハァ――ンッンッ……」 期待していた強さではなくて焦れる。
瞳に映る姿は足元を這い浅ましい。―――そして紅い。熱いと思っていたらあんなにも紅い。 望んで尚痛みに怯えるのが浅ましい。打たれ芯を持ち出したソレが浅ましい。
 侮蔑とも怒りとも取れるその眼で、その左眼で、視られているから「もっと」口だけが無意識に動いた。 「ヒッ」 真っ白な手袋をした手が首にくい込む。

 おののくままに軽く払われ随分と飛ばされた。
虫けらかゴミの様な扱われ方にむせながらも絞めるれた首をウットリと撫でてみる。 手袋越しでも触れてもらえた。それだけでも……もう……もう……

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