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『Monster's prince in Halloween』  (by 円茶)

「坊ちゃんは?」
 狼男は鍋をかき混ぜる手を止めて居間を覗き、そこに居たドラキュラに尋ねた。窓から覗く今夜の空は三日月であるし、食事の支度をしている今は、もちろん人間形をとっている。
 体格が良く、茶褐色の髪が伸ばしっぱなしの無造作さで肩にかかり、ジーンズとシャツの着方もだらしなく、どことなくあか抜けない。ただきりりと締めた白いエプロンだけがやけにまぶしい男だった。

「お友達のヒロシとお出かけになった。最近は日本でも万聖節の祭りをやるらしい」
 ドラキュラはいつもの黒服で髪もきっちりと撫で付けている。青白い顔色の眦の鋭い美青年だが、癇性に眉間をしかめたままである。

「フランケンが護衛に付いて行ったから大丈夫だろうが…それにしても人間どもと馴れ合うのはいかがなものか。ことに」
 ドラキュラは弁舌を切り、マントを翻すと腰に手を当てて憤然と狼男を睨み据えた。
「あのヒロシとは近づき過ぎる。婚約者であるカイ子様をさしおいて、次期王妃の座を狙っているのではないか?」
「王妃って…おい、一応あの子は男なんだがな…」
 狼男はめまいしたように額を押さえ、厨房へ引き返す。オーブンからパンプキンパイのいい香りが漂ってくる。チキンソテーにかけるソースの煮詰まり具合を見て火を止める。

「男だろうと油断も隙もあったもんじゃない。坊ちゃまをたらし込んで、魔界の偉大な力を手に入れんと狙っているに違いない。男になるも女になるも、坊ちゃんの思いのままだと囁いて、秘術を聞き出すつもりだろう」
 ドラキュラは、町内子供会のどこかの家を訪ね歩いている姿が見えるかのように、屋敷のドアを振り向いて身震いする。
「はあ、それで?」
 厨房の奥から気の無い返事が一応は返ってきた。水音と冷蔵庫を開け閉めする音が聞こえる。 

「だいたい人間というのは不遜なものだが、ハロウィーンが何かわかっているのか? 浮かれ騒ぐためではないぞ。いにしえにおいては、人ならざるものへの敬意が込められていたものだ。それが今はどうだ!? いや、私は将来の王たるもの妾や小姓を持つのは、たしなみとさえ思う。しかし、日本人はいかん。クリスマスもハツモウデも一緒くたではないか。それが我々、魔族に敬意を払うようになるとは思えん」
「…そういう人間も居るがなァ…ヒロシは大丈夫だろう。いい子だ。それに、お前がその敬意とやらを教えてやればいい。お役目だろう?」

 再度、狼男が厨房から出てくると、手に赤い液体が入っているグラスを持っていた。ドラキュラにソファに座るように促して差し出す。キャラクターの絵がついた子供向けのグラスだが、口元へ近づけると微かにアルコールの香りがした。
「優れた方だが坊ちゃんはまだ子供だ。ゆっくり見守っていけばいい」
 狼男もエプロンを取って隣に腰を下ろすと、軽くドラキュラの肩を叩いた。

「お前の作るブラディ・メアリーは美味いな。もうご馳走は作り終えたのか?」
「ああ、終わった。後はお帰りを待つばかりだ」
 ドラキュラは一口飲むと目を細めて味わった。唇だけに血の気がさし、吐息が漏れる。
「お前は素晴らしい料理人だ。坊ちゃんのお側に支えるにふさわしい。フランケンも、言葉は少ないし一見無骨な男だが、あれでいざ動く時は頼りになる。…私は何ができるのだろうな。魔界のプリンスとしての身仕舞いをお教えしようにも、あの方は私ごときが口を出すまでもなく聡明であらせられる。ヒロシのこともお考えがあってのことだろうか」
 グラスを煽って喉を鳴らす。狼男は少し眉を潜めて、動く喉元から目を逸らした。

「私ときたら、得意は深夜の夜空をふらつくぐらいが関の山だ。せめて使えるのは血筋(コネ)程度のもの。父王様と袂を別つ折にでもお命じ下されば、恐れ多くも弑逆奉るだけの軍を集めて差し上げられたのに」
「おいおい、酔ったか? 物騒なことを言うなって。聞かれたらどうするんだ。そこらに手の者がいるかもしれねぇぞ」
 狼男は俯くドラキュラを横から覗き込み、慌ててグラスを取り上げてテーブルへ置いた。
「人間界へ来てからというもの、坊ちゃんがどんどん大人になってゆかれるようでな……。いまにご自分の手で何もかも手にお入れになるに違いない。実はフランケンも要らぬとおっしゃるのを、私が無理やりついて行かせたのだ。昔は我ら3人でお供したものだが」

 ドラキュラは寂しげに笑って、仰のけてソファに凭れて目を閉じた。狼男は、仰け反った喉を締めるマントの結び目を解いてやると、そのまま指を顎の線へすべらせる。
 逆に血を吸われるのにふさわしいような滑らかな肌に、狼男は牙を食い込ませたい衝動に駆られたように鼻に皺を寄せて鋭い歯を覗かせた。
「坊ちゃんにはまだお目付け役は必要だし、教育係はそうやって心配するお前以外にできる奴はいない。俺やフランケンのように、大雑把な奴ばっかりじゃだめだ。あれこれ考える奴がいなきゃだめなんだ」

 狼男は身を寄せてドラキュラの耳元へ囁いた。ドラキュラは顔を腕で隠したが、そっと取り払われても抵抗はしなかった。
「俺たちも、お前が居てくれなきゃ困る。魔界の連中とかとの…駆け引きには、疎いからな…」
 ドラキュラは額を撫でられると瞼を開いて、いつの間にか間近にある狼男の顔を見詰めた。精悍な顔が情動を抑えようとして口元を歪め、物騒な笑みを浮かべていた。
「…嘘をつ…け」
 喉元を強く吸われてドラキュラは言葉を無くした。再び視線が絡まると濡れた紅い目で見詰め返す。狼男は息を呑んでドラキュラの顎を取りゆっくりと顔を重ねていった。

「Trick or Treatォォオオオッー!!!!」
 怪物王子の叫び声と、ドアを開け放つ音が響き渡った。

「おい、狼男! ごちそうの用意はできているか? ドラキュラ! オレの部屋はキレイになっているだろ…う、な……」
 目がしっかりとソファの上の2人を捉えている。歓声とともになだれ込んで来た子供達は、王子の伸びた腕に阻まれるまでもなく、王子と同じモノを見つけて部屋の入り口で固まっていた。
 
 まず、のっそりと狼男が身を起こして、黙ったまま厨房へ消えていった。王子は腕を戻すと友達に来いと身振りで示し、何事も無かったかのように階段を上がっていく。子供達はちらちらとドラキュラと厨房を見比べたりしていたが、王子の癇癪声に急き立てられて2階へ駆け上っていった。
 最後にフランケンが部屋へ入り、玄関のドアを閉めた。王子たちが近所でせしめた山ほどのお菓子を持っている。ソファの横を通り過ぎざま、ふと足を止めると物言いたげにドラキュラ目線を送った。

「何だ…?」
「首。ついてるぞ」
 フランケンは低い声でぼそりと呟くと、まだ頭の回らないドラキュラを残し王子を追って消えた。2階からは無邪気な笑い声が聞こえてくる。
 その階段から王子が伸ばした手がやってきた。ドラキュラに紙切れを落として、また元へ戻っていく。

(慣れているから気にするな。それよりメシを早く持って来い。ヒロシが居るからキスマークは隠せ)
 ドラキュラは静かに立ち上がると厨房へ入り、狼男に紙切れを差し出した。

「やはり私は必要なようだ。この家は乱れきっている。規律が必要だ」
 咳払いし、ごく平静な声で言うとマントを着なおす。しかし、はらりと額に落ちかかる髪をかきあげ、狼男を見上げた目は焦点が合わず、据わっていた。

「魔物が活動するのは夜だ、夜中だ、深夜だ。何が悲しゅうてニュー・ファミリーな団地に屋敷を構えて住まにゃいかんのだ。化け物なら墓地だ。お前は人里離れた山だ。そうだ日本アルプスへ行け。八甲田山でもいい。廃墟だ。廃墟ツアーだ、軍艦島だ。棺桶だ、棺桶をよこせ!」
「お、落ち着け。悪かった。ほら、坊ちゃんへ料理を届けないと。な?」
 鍋の蓋を開けて湯気の上がる料理を見せてみる。銀盆に並んだオードブル、フルーツ、ケーキと、所狭しと収められた冷蔵庫をも見せると、ドラキュラは天井越しの2階を見上げ、いくばくか落ち着いたらしく肩が荒い息で上下した。

 狼男はにっこりして背を向け、冷えたジュースを取り出して運ぶ用意を始めた。だが、ドラキュラの息遣いを聞くと、つい思い出して口の中で呟かずに居られない。
「でもお前もあんな無防備になるから悪い…」
「どの口だ」

 背後から厳しい声が飛んできた。いつの間にかドラキュラの手に拳銃が握られていた。もちろん銀弾装填済みだろう。狼男の胸へ突きつけ、流し台へ追い詰めた。
「聞こえたぞ。どの口だ。坊ちゃんに悪影響がないように、しっかり 潰 し て やろう。私は王子をお守りせねばならんからな。例え同じ魔族だろうと、邪魔するものはやっつける。坊ちゃんのためならエンヤコラだ」
「……こういうやっつけ方は…アリか?」
 ドラキュラは取り合わず、銃を狼男に当てたまま、唇へ軽く噛み付いて言葉を塞いだ。

 ソファでの行為の続きを始めた狼男とドラキュラは、体格に似合わずひっそりとやってきたフランケンが、呆れたような溜息を付いてオードブルの皿を運んで行ったのも、痺れを切らした王子の手が料理を浚っていくのにも気づかなかった。
 
「おい…っ、言う事と行動、が…」
 狼男が口吻けの合間にぼやくと、ドラキュラはゴリ、と銃口を食い込ませて微笑んだ。
「黙れ。これが怪物の教育法だ」


end
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Categorie10月お題『ハロウィン』
Genreアニメ・コミック Themeボーイズラブ

2005’10.28・Fri

ハッピーハロウィン

「最後にあそこ行こう、あそこ」
子供達が何やら相談している。「え~あのおばけ屋敷?」「そうそう」などどうやらこの塾の近くにある広い敷地を所有し鬱蒼とした木々の合間に見える年季の入った洋館の家のことを言っているらしく皆怖がりながらも興味津々といった具合だ。確かに誰が住んでいるのか気になるところ、かく言う僕もどんな人がでてくるのか、あのうちの前を通るたびに気になってはいた。
(そうか、今日は堂々と尋ねられるな)


今日はハロウィン。皆楽しみにしていたようでウィッチやらデビルやらスクリームやら…色とりどりの仮装で決めてきていた。
僕は今年アメリカから留学してきて現在は日本の大学で日本文化や文学を専攻中、その生活費稼ぎにこの英語塾の講師として働いている。いつも小中学生から大人のスキルアップのための講座まで担当している。
今日は最近日本でもハロウィンをするのが流行り?っていうのあってこの祭りをするようになったとか、英語塾などは欧米の風習を知るって意味もあってこのイベントは欠かせないものになってきているらしい。一応塾側も近隣の家々に協力を仰いでくれていて根回しも充分。今日の僕の仕事はそれの引率だ。
僕も勿論仮装した、こういうお祭り騒ぎは大好きでしっかりとドラキュラ伯爵になりきって、まずはハロウィンのことをお勉強したおさらいをして、マナーを確認して子供たちに混ざって出発!
夕暮れ時、かぼちゃのJack-O’-Lanternを飾ってくれている家もあって、中には雰囲気を楽しもうと生のかぼちゃで作った本格的なものもあって灯火がその光を漏らしていた。
やっぱりやるならとことんってネ。僕もその口、大いに盛り上がってきた。

「Trick or Treat!」
子供たちは玄関先でそういっては一軒一軒玄関先で騒ぎ立てる。
「ハッピーハロウィン!」
と言いながら、子供たちが持っているかぼちゃの容器にお菓子を入れてくれる。子供たちも楽しんでいるようでお菓子を抱えて次から次へと家を回った。
子供と一緒に叫び声をあげてワイワイと町内を練り歩く。すれ違う人の視線も柔らかでおおむね受け入れられていてこの祭りがこれからも定着してくれればいいなあとか、まじめなことも思った。
イベント好きなアメリカ人としては、ぜひお願いしたいな、ハロウィンはアメリカのフェスティバルだからね。

と、考えているうちにとうとうアノ家にやってきた。
夜の帳が下りて街灯がうっすらと道を照らす。
町の高台の一番奥にあるレンガ造りの高い壁に囲まれた、洋館。
家の周りを取り囲むように茂る木々の間、屋敷の一室、薄く明かりが灯っていた。けれどいつも感じる不気味な雰囲気はある、確かに人は住んでいるようだけれどどんな人がいるのかも、本当に澄んでいるのかも疑問の大きな館。年の言った偏屈な老人、とか住んでいそうだ。
けれど今日はいつも堅く閉められている門扉は今日は「どうぞお入りください」という感じに開いていた。
ここも塾が根回しはしてくれているようで、一応訪問コースになっていたので入っていいんだろうな、と判断して
「さあ、行こうか」
と子供たちを促すけれど、門から石畳で続く玄関までの30mぐらいの道のりは暗く、何の明かりもなくて不気味でさわさわとゆれる木々のざわめきも、子供たちの恐怖をあおったみたいで
「センセー先に行ってよ」
と誰かが言った。勢いづいていたのに誰も一歩を踏み出さないので仕方なく
「じゃついてきて!」
と先陣を切ってその門をくぐった。
まっすぐ伸びる石畳の周囲はよく手入れされた芝生で、真っ暗で見えにくいが広い庭にはさまざまな花木が植えられこれも充分に世話をされているようであった。木々の間からは温室らしきサンルームも見えた。緑溢れるといった様子できっとこの家の主が好きなのだな、と感じさせた。子供たちはきょろきょろとあたりをものめずらしそうにしながら僕の後ろをそろそろついてきた。
玄関には薄暗い明かりが配されていた、重厚な木のドアを前に立ち止まって
「さあ」
と促す。
玄関の戸を叩いてお決まりの台詞を言うようにと一歩下がるが
「誰かいるのかなあ」と誰かが恐る恐る呟いて
「ホントにおばけ…がいたりして」このあたりでは「おばけ屋敷」の呼称で親しまれたところ、皆躊躇している。
「大丈夫、さあ。大声で!」
と僕が言うと皆怖いもの見たさ、の心境もあってか意を決し

「Trick or Treat!」

と叫んだ。
すると

バン!と待ちかねたようにドアは開き。
現れたシルエットは細いなあ、と感じる男性だったが、その顔は頭に斧が刺さったどこかのB級ホラー映画で見たような、なんとも間抜けな被害者の断末魔のような様相の被り物で、面白がって懐中電灯を顎から上に照らしながら現れた家主は

「はっぴ~はろうぃん」

とわざとらしい濁声とともにでて来た!

「でた~」
とそれは子供たちを怖がらせるのに成功し「きゃ~」とか「わ~」とかって逃げ出させるのに充分な迫力と不気味さをかもし出して
「ふははははは」
と笑った。

「怖いよ~」
と皆逃げてしまってぽつん、と残された僕はというと。
結構なインパクトに固まってカチンコチン逃げるも何もできなかった。

本当は超、怖がりなんだ。
きっと目も点!って奴になってるんだろう。

固まったまま突っ立ってると
「あはははは~」
と無邪気に笑いながら被り物をとる家主が
「こんなに驚いてくれたら、大成功!」
と現れた仮面の下。
切れ長の目にメガネをかけた白皙の一見冷たそうな繊細な面持ちに感じるが、意地悪大好きというやんちゃな瞳で、大胆に笑うその笑顔とのギャップが僕を釘付けにした。外見も顔も中性的なんだけどなんかどうにも性格はそうではないようだ、年はいい大人の年だと思うけれど童顔で年齢不詳、人の興味をそそるそんな存在??
できっちり美人、そう美人て言うんだと思う。

な、なんか胸がどきどき高鳴ってる、なんだ?この動悸は。
笑顔が焼きついて…え?え?この感じって。

「な~んだこんなにお菓子用意したのに!」
と子供たちがいないことに今度はぶーと膨れてる。背後から持ち出した両手いっぱいのお菓子。
「ま、じゃドラキュラ君」
僕にハイ、とそれを差し出して。
「代表して君に」
笑い過ぎたのか涙がたまっている笑い上戸らしいこの人。こういう得体の知れない美人て好みなんだよね。
びっくり箱みたいな、そんな感じの人。
何だか、何だかなんていうの?日本語で今こういうのを言葉にすると?

「萌え」

でいいんだっけ?

きょとんと見つめ返されて美人が笑った。

「キミ、おもしろいね~」


そんな感じでお互いを認識した、出会い。
ハッピーハロウィン。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あ~も~どっかで書いたようなネタ。
自分の当番が来てるのに思い切り寝てました。深夜に書いております、ネタも何も浮かばない。ダメダメ。逝きます・・・。
(ぴかり)

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Categorie10月お題『ハロウィン』

2005’10.26・Wed

たまにはイイかも…

◆◆ハロウィンパーティー

「なにがハロウィンだ!タダの仮装パーティーだろうが…。」
なにが楽しくてこんな事をしなければいけないのか?

この所仕事が忙しくまともに自宅に帰ってもいない。今日だって…イタリアでの仕事が片付いて帰ってきたばかりの俺を、いきなり空港で仕事仲間が待ち伏せていて無理やり車に押し込まれた。
俺は今日からの久しぶりの休暇を「自宅でゆっくり過ごす。」そう決めていたのに…。
とんだ災難だ!
挙句に…酔った仲間に中々解放してもらえず…予定の帰宅時間を大幅にズラしてしまった。
久しぶりだから…アイツとゆっくりしたいとか、美味いモンを食わせてやろうとか思っていたのに…散々だ。

どうにか、やっとの事で解放された俺が自宅に帰り着いた時には、明け方近くになっていて…空も白んで来ていた。
「最悪だな…目はチカチカするし…その上…コレだ!」
手に持たされたモノを見ると、また深い溜め息が出てきた。
なにが楽しくて自分の「デスマスク」なんかを持ち帰らないといけないんだ?
仕事仲間が用意した俺のパーティー用の仮装…それがこの「デスマスク」だった。いったい、いつの間にこんな物を作ったのか?

出来は悪くない。俺でも見せられた時には一瞬ドキリとしたくらいだ。自分が死んだらこんな顔を晒すのか?なんて思ったりした。その上、そのマスクには血のり付きで…どう見てもお化け屋敷に飾られている方が似合いだと思うようなモノだった。

それを被って過ごす事を強要されそうになって…いい加減疲れが溜まっていたのと予定を崩された事で機嫌の悪かった俺は周りを怒鳴りつけてそれを被る事だけはしなかった。
でも、そのモノ自体は持ち帰るようにと強引に手渡された。と言うか…押し付けられた…と言うべきだと思う。

そんなこんなで気分は最悪の俺は自宅で不貞腐れ…アイツが朝起きて来て俺が起きている事に驚く顔を見る事…なんなら登校するアイツを車で送ってもいい…きっと嫌な顔をして俺を楽しませてくれるだろう。

そんな事を思いつつ玄関に辿り付いた俺は鍵を取り出そうとしてそれが無い事に気が付いた。
空港で仲間に拉致同然に連れ出された俺は荷物をマネージャーに預けた状態になっていた。その上…機嫌が悪かった俺はパーティー中に「荷物をどうしようか?」とメールをくれたマネージャーに「明日でいい!」とぞんざいな返事を返していた。
「しまった」と思っても今更どうしようも無い。かと言って、この明け方の寒い中外でまつ訳にもいかない…どうするか?そう思っていると目の前の扉の奥から小さな物音が聞こえた。
そして、そのままリビングに位置する窓から明かりが漏れていた。
(もう…起きたのか?)
まだ明け切らない空を見て腕の時計に視線を戻せば…間もなく午前5時…になるところだ。
(この時間ならイイか?)
起きてきているのがアイツだと確信した上で玄関のチャイムを鳴らした。アイツなら、こんな時間でも俺かも知れないと…たやすく扉を開くだろう?そう思えた。

間もなく玄関に灯りが点り、扉の向こうからこちらに問い掛けるアイツの声がした。
「あの…どなたですか?」
何ヶ月振りかに聞くアイツの生の声…新鮮な気がした。
「俺だ。鍵を荷物に入れたままで預けちまった…開けてくれ。」
もっと優しく言いたいのに…不機嫌な声が出てしまった。いつもそうだ…アイツの前では…こうなってしまう。
「××…待って直ぐに開けるから…。」
ガチャガチャと鍵を弄る音がして扉が開いた。
『ただいま…』そう言おうとした俺の耳にと解いたのは耳を突き刺すようなアイツの悲鳴だった。
「いや~××…何で…」
そう叫ぶと目の前のアイツの身体は後ろに向って力なく倒れていく。
「△△…どうした?」
俺は慌てて手にあった荷物を放り出して倒れていくアイツの身体を引き寄せ抱き留めた。
アイツは俺の腕の中で力なくクッタリとして気を失っていた。
「どうしたんだ?いきなり…なんだって言うんだ。」
そう思って周囲を見渡して見て、なんと無く分かってしまった。
(コレか?このデスマスクを見たのか?)
どうやら俺の持っていたデスマスクが目に入り驚き気を失った…そう言うことのようだった。
(こんなに驚くなんて…チョットは俺の事を思ってるって自惚れてもいいのかな?)
そんな事を考えると少し嬉しくなってしまう。
俺はそのまま抱き上げると玄関を閉めて奥の部屋に向かった。
目が覚めるまでは…このまま側で抱いていようと思った。

たまにはイイだろう?いつもは素直じゃ無いお互いですれ違いも多い。それにこの所は仕事が忙しくて、まともに話せてもいない。
目が覚めなければ…そのまま学校も休んでもいいじゃないか?
後で膨れっ面をして抗議するだろうが…気を失ったお前が悪い。たまにはささくれ立った俺のリフレッシュに付き合えよ…俺にはお前が居ればそれでいいから…お前ももっと俺を欲しがれよ。

ベッドにそっと横たえてから俺は、リビングや玄関の戸締りと灯りを消してまわった。
そして最後に玄関に散らばった俺の荷物をまとめ、その中から例の「デスマスク」をゴミ箱に捨てた。
目が覚めた時のお前の反応が楽しみだと思って口元が弛んでしまう。
そして俺は何事も無かった様に後始末をするとアイツの横に潜り込んでその身体を抱き寄せて眠りに付いた。

たまにはイイだろう?こんな時間も…。

by ポンチ

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