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2005’12.24・Sat

アンチ日本X’mas

「遅い。凍死するかと思ったじゃないか」
 仕事から戻ると真樹の拗ねた声になじられた。目深にかぶっていたハンチングを少し上げ、広い庭を見回すと門の陰から飛び石を踏んで、まだ19歳の細い姿が現れる。宗二は通用口をきちんと閉めてから、ゆっくりと彼に近づく。溜息に白い息がひときわ大きくなる。
「そう思うなら来るな。仕事があるのは言っておいたろう?」
「だってクリスマスに……ひどいよ。やっぱ一緒にいたいのに!」
 大きい目に涙をにじませ、ついでに寒さで鼻水をたらし頬を赤くして睨みつけてくる。
「クリスマスだろうが何だろうが、俺の仕事は休めないのはわかってるだろ。それに……」
 宗二は自分の襟巻きを解いて、真樹の首を包んでやった。そのまま抱き寄せると袂からハンカチを出して顔を拭ってやる。
 庭を横切り自室の離れへ連れて行きながら、星まで凍ったような夜空に影が浮かぶ五重塔を見上げた。
「俺は仏教の坊主なんだがな」

 暖かい部屋で真樹に飲み物を与えて落ち着かせた。法衣をシャツとジーンズに着替えて宗二もその隣に腰を下ろした。帽子の下は生真面目に剃髪して青い。
「だからさ、結局お前のはアレだろ? クリスマスには鶏とケーキ食いましょう、ホテル行ってエッチしましょうとか、クリスマス商戦に乗せられてるんだ」
 真樹は立てた膝の間に当てたカップを覗き込むように俯いた。唇が引き締められる。しかし宗二からは見えないが、視線はもう潤むどころか強くカップを睨みつけており、続ける宗二の言葉に柳眉がつりあがった。
「他人と同じ事をしないと安心できないか? よく考えてみろ。意味なんかないだろ? キリスト教徒でもないし、ケーキ屋でもないからな。寺でもクリスマスをやるところはあるがうちは違うし……」
「そういうこと言ってんじゃないだろォ! 26でそこまで間抜けかよ! ああ、他人と同じ事したいんだよ。どんなイベントでも引っ掛けてあんたと会いたいんだよ」
 湯気の立つ飲み物を煽るとテーブルへカップを叩きつけて置いた。舌を火傷したらしく、舌打ちして眉間に皺を寄せると宗二の投げ出した足の上に跨ってきた。
「あんたが腹立つこと言うからベロ焼いたじゃんかよ。舐めて直せ。……馬鹿馬鹿しいのは承知の上だ。大体、男同士でこんなことしてて、これ以上馬鹿らしいことなんかめったないよ」
 禿頭(とくとう)を両手で撫で、小首をかしげて微笑すると真樹本来の「天使のような」優しさが蘇る。
 その微笑に飲まれたか、宗二は意外と素直に真樹が突き出す舌を舐めた。後手をついて距離をとって困ったように見上げる。
「だから、わざわざクリスマスだの何だのこだわることもないだろう。いつでも、会いたいときに会えばいい。無理なときもあるが、それは仕方が無い」
 どこか不思議そうに、おずおずと宗二が呟いた。座った姿勢のまま後ろへ引いていく宗二を追って真樹が伸し掛かる。自分より華奢な体に組み敷かれて、さらに宗二の声が小さくなり頭の先まで上気して赤くなった。
「俺は、馬鹿らしいと思ったことはないが、真樹はそうじゃないのか。イベントに騒ぐ気にはなれないが、お前とは一緒に居たい」
「俺も一緒に居たいから商談成立。たまには商業主義も悪くないよ。いつでも会えるけど、特別はたくさんあったほうがいいんじゃない?」
 真樹が鮮やかに笑うと、宗二は苦笑して畳に仰のけに倒れた。
「不成立。俺は特別はひとつだけだ」
「ご本尊とか言ったら泣くよ」
「花祭りにも会おう」
「その前に2年越しも一緒でないとヤだ」


 明かりが消された部屋では、熱い息と衣擦れの合間に宗二がぼやいていた。
「住職の鐘つきの意味が……」



*********

バカッポー。
花祭り=お釈迦さん誕生日 です。蛇足ながら。
タイトル負け感アリアリ~。
(円茶)
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Categorie12月お題「クリスマス」
Genre小説・文学 ThemeBL小説

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