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2006’04.12・Wed

扉への路 3

「扉への路」過去ログへはこちらから>>>>>>


錬成陣に書かれた円は=世界であり、木・火・水・土・金からなる点を結ぶ図形こそがその世界のあり様を示す。複雑な構築式は真理を求める者には理解する為にある。が、人としてそれはけっして解いてはならぬ神への領域でもある。
 今宵も、幾多の贄の魂と肉を屠った幾重にも成る陣は血でこそ繋る完璧なる世界であり、宇宙であり、人を示す。

 水、炭素、アンモニア、石灰……
足りない。それだけではまだ足りない。
 魂は21gだとその昔、学者が実験の成果を世に出した事がある。
―――我々は人間ではない。この21g足りないばかりに我々は人ではない。
ふと子供に読み聞かせたピノキオが頭に浮んだ。あれは最後に人間になったのだろうか?死んだ息子の変わりに作ったピノキオの話はよく知る囚人と同じだ。くぐつに魂を付着させるのは子供の童話からも想定済とはなんと業の深い事か…。

 考えるのはやはり構築式の事だけだ。今度は何が足りない、何が間違っていた…。我等より遥昔から神に挑みし諸行は今だ成功した試しがない。生ずるのは形なきモノか化け物のだ。
リバウンドも、一つの大国が滅んだ昔話も、人を創ろうとした代価にすぎぬ。だから人を創るは禁忌だと、古より実しやかな話はそこかしこに隠れてる。『―――時世はついに来ぬものか』
そう、我々の諸行は人には災いであろう。
現在も、過去も、それはその愚かな血肉は糧になる。
 そして鍵は羽化を始めた。
 今度はどうだ?何処まで行けた?――何を見てきた?
 椅子から立上がり燃え盛る駒に触れたのは錬成陣の中でぴくりとも動かなくなっていた儀式に犠牲になった女ではないか。
―――ほう?
以外な人物の動きに眉が上ったのはここにいる皆がだ。三人三様の表情をしたまま動きを止めた。
戒めの楔は熱で熔けその身体からは熱気が吹き出し、蜃気楼のごとく歪みを造り、せわしない揺らめきの中立つその姿は、白金の髪を靡かせ、凍付いた碧を湛えた瞳、何かの紋様を浮かび上がらせた肢体は、輪郭がまだ定まらず空中に溶けそうではあるがどう見ても男だ。
 この飛び入りの客がどう動くのか?静観する事に決めたのか一人は薄笑いを浮かべたまま壁に背を託し、一人はその豊満な胸に興奮を隠し、一人は僅かに開いた眼を二度閉じたまま微動だにしない。

 やや、不思議気に自分の手を見つめるそのまなざしはよく知る闇と同質であり、恐らくは何も考えが生まれていないのであろう。
やや間を空けて燃え盛る炎に誘われるかの様に近付いた。何処とも説明がつぬ場所が痛みに眉がよる。血が太股を伝い落ちたは間違いなく女の身体の証拠であり、久しぶりに手に入れた身体が上手く馴染めないのか時たま酷くブレをお越して下半身を同じく、男と女の上半身がはっきりと分れる。
表情を失っているそれは何かの神話で出てきそうな男女対の神獣のようでもあり、欺なす悪魔のようでもある。
 駒は近付いたそれが誰か分かっていない。息も絶え絶えに助けを求める様に手を伸ばした。

 あれだけいたぶられ続かれたのに止まらない。この炎の様に止まらない。熱気で息が出来ない。余りの熱さに今、何処に存在のか分からなくなる。徒もすれば視界が絶たれた分、またあの闇に呑まれたかの様なこの部屋の空気は吹き出る炎より危険だと焦りとえも知れぬ恐怖に苦し紛れに手を伸ばした方向に何かが存在る。
 目が効かない分よく分かる…暗い水底に映える白い………それも闇だ。同質の触れてはならざる者。
「はっ…」
甘美な恐怖が唇に走る。実際にはまだ達してない身体がもどかしくて切なげに痛みを伴いながら下腹部に広がる。背中に受けた傷がひどく疼いて身体は今にも焼け溶けるか、中から砕け散りそうな痛みを伴っているのに死に隣接する苦しみが堪らなく快楽を求めて急かすのだ。
早く、早く、この痛みを忘れる為の強く激しい刺激が欲しい。欲しくて堪らないと。
 火なら最初から撞いていた。炎なら最初からたぎっていた。―――来るか?
問われ伸ばしたその手を取った瞬間からだ。これが主の口付けならばどうだっただろう?いや、観ている。見えなくとも分かる。知らない二人は同じ眼をしていたがあの人は違うのだ。奥に渦巻く暗闇に触れられずとも貫かれてると感じるからこそ、動悸はさらに早まり屈辱感にさいなやまれながらも崇拝してしまう己に何度も警告したはずだ。こうなるのは分かっていたこではないか…。それもすぐ熱で溶けた。
 見えないもう一つ加わった視線が皮膚から吸収され血管を伝って血から奥から声にならない程の疼きを絶え間なく産みだす。
 すでに熱くて堪らないのに触れてくるそこが熱い。相手が限りなく熱い。
熱で焼かれた唇は血と肉の味がし、死の影を濃くする。
始めはただ唇を重ねるだけからやがて激しく舌を吸い口内を舐め回し舌が奥へ奥へと浸蝕し溶け出た何かが魂を絡めとらんと奥へ捩り込む。
じりじり焼かれるのを厭いもせずその手は愛しそうに身体に触れているくせにその眼も顔も死人の様だ。
 計り知れない熱で揺らめきの中交わるのは一度きりの生の証。破滅への助走。

 あれもただ焼かれるだけの存在と高を括っていたから手は出さなかった。冷酷な薄笑いを浮かべ死の匂に酔う。
「?」
 表情のない男の顔が有得ない角度でここの主に向いた。
微動だにしなくともやや開いた眼が僅かに驚きで揺れた。
「コれで ハ たリ ナイ  。シっぱ イ ダ。」

「失敗だ。」
 唯一、今の光景を観ている右眼がすっ…と細まる。
――その台詞は昔この場所で聞いていた。
そう、もうずっと若い時だ。次々と積まれた死体に白衣を着た何人かがぐるりと囲い言っていた。
おそらくは実験でもしてたのだろう。――人を殺すのはいつでも人だ。
 一つの大いなる感情が吹き出そうになり口をキツく閉じ眉間に深く縦皺をよせ怒りを押さえたその顔は正に吽顔。
早く焼かれしまえと言わんばかり四番目の兄弟が腕を組み替えた時それはおきた。
 眩い光がこの地下室を瞬間覆う。その光は錬成反応ではあるのだが余りにも強い。
駒の熱が瞬時に吸われ短い、魂斬る叫びと性を放ち床に落ちた。
大きくブレをおこしていた女と男の姿は僅かな揺らめきを伴いながも紋様かと思われたそれは火傷や切り傷であり、痣をもはっきりとさせた男へと案定を果たした。
 炎を。力を吸い取っただと?酷く顔を歪ませたのも四番目の兄弟だけだ。二番目の兄弟は自ら来たる獲物に舌なめずりをしている。
どうする?
誰が動く?ピリピリ肌を刺す緊張が走る。

「あーはっはっはっはっ!」
 そんかな中、底抜けに明るい芝居がかった笑い声が響き渡り誰もが笑い声の主に目を向ける。
左手は額に、右手は腹に。おかしくて堪らないのか閉じた目尻からは涙がうっすら出し、背中まである髪が笑い声と同じリズムで揺れている。
「こいつはいいっ!傑作だ!!」
なぁ?と話掛けた相手は崩れ落ちた駒にだ。無論、返事などあろうはずもない。そんな相手にまだおかしいのか背中をバンバン叩いたかと思うと髪を鷲掴みにし、一気に片手で引き上げた。自分より身長がある分膝が曲がりハの字なった脚には力なく垂れ下がり白濁した液が垂れている。
ん?ちゃんと立てないのか?なおも笑いながら右腕を絡ませ自分の胸にその身体を起き左手でクッとその顎を上げ問う。なまめかしくも赤い唇のその色は血。余熱を持ってその身体は今なお熱いのに先程から瞼一つ動かない。
 死んだか。
アレの力はそう言うモノなのだ。
 高く明るい笑い声はその眼が開いた瞬間、低く、周囲の闇が一気に吸う息に引き込まれたかの様に冷気を孕み、蝋燭の仕業なのか影が別の生き物かの様に壁を這う。
「はははは…」
顔はまだ笑っているのにその両眼は来訪者を真っ直ぐ睨んでいる。
「覚えてるぜ。その顔!
――思い出したぜ。……その力よっ。」
口調は低く唸り激しいが、駒に這う舌は優しく、愛しく、滑らかに、頬を寄せ、髪を撫で唇に中らぬ様舌を這わすのかと思えば、急に癇癪を起こしてみたりと、その顔はコロコロ変わるくせにまなざしはソレを捕らえたままだ。
 その身体はされるがまましだれかかり、その愛撫に心地よく酔っているようであり、ただの糸の切れたマリオネットそのものだ。
「その身体はまだ使えるのよ。」
身体をくねらせ、困るわ~と言わんばかり二番目の兄弟が窘めるがその態度はどう観ても笑っている。
それが死のうが生きようが関係ないのだ。儀式は失敗した。いつもの事だ。
舌を胸まで這わせてその動きが止まった。
俯いたまま肩を震わせまるで泣いてる。
しばらくの沈黙の後寄り目にして舌を出した無邪気な顔がばぁ~!と明るい声と共に上がった。
つまらん。いつもの悪ふざけだ。取り立て反応する事ではない。
「ふん。相変わらず笑わないな~  じゃあ、これはどうだ?」
指を一本立ててくるっと輪を書くとぴたりと駒の胸を指す。
「こいつ―――生きてるぜ。」
「!……何?」
部屋の主が音をたてて椅子から立ち上がる。もう一度言うのが面倒臭いのか指した指を耳に入れ、ぽいと駒を手放す。
そのまま崩れ落ちた駒はどうみても死体。何よりもアレに力を吸われたのだから。
「そうか…還ったのか――陽炎の…」

 陽炎。
それが彼の二つ名だ。かつての儀式の犠牲者でもある。
「あそこから還って来たか…」
有得る。有得るかもしれない。彼はそう育てられてきた。この駒も生きて還っているのなら、100年に一度とうたわれたその力ならば何かは興せる。
 我らと同じ化け物と呼ばれたその力ならば!

 理解かるか?我々を化け物と呼ばれる様に貴様のような人間を魔人と言うのだよ。
―――その力は我々に近い。

 何時の事だったか…、その力を求めて手を差し出した事があった。
 いるのだ。時たま人の中に生まれ出るのだ。異形の力を持つ者が…。そして虐げられる。過去も、未来も、現在も。ここに存在瞬間も。
「お前にはここは地獄だろう。」
ん?問い掛けと言うよりは独り言に近い。
身体にある傷は戦場の傷であり、愛されなかった虐待の傷。力があるゆえの…。

「お前なんか産まなきゃよかったよっ」
 ヒステリック叫ぶ女が陽炎に立ちはだかった。実際はもっと若いのに酒のせいでかなり荒み老けて見える。あばらや背骨が捩れ浮き出た姿が悍ましい。
 これは悪夢。
かつて、自身の体だった時に繰り返されていた悪夢。口汚く罵り叩かれ、殺されかけた――それは現実。逃げる様に軍に入ってもなお繰り返される暴行。無茶苦茶な配属。それでも見つけた小さな希望も喜びも裏切りの前に砕け散った。
それでも、それでも…それでも!人は常に彼を裏切った。光はいつも遠い。

 今は実の母を目の前にしてもその無機質な瞳は変らない。もう、ソレで傷つく事はない。悲しむ事も泣く事も悩む事もない。心はもう―――ない。
 腹を貫かれ血反吐を吐き生き絶える姿を見下ろす事などない。

『来ナイモのか 来ないモノカものか
陶酔のソノ時は
僕は我慢ニ我慢しタ
おカゲデ一生忘れなイ
怖れモソして苦しミモ
天高く舞い立ッタ――――』

 誰かがお父様はお喜びだわと高笑いがおこった。
「へぇ~今度は殺せたじゃねぇか。」
にいっと笑う四番目の兄弟が血をこすり貫かれた腹を塞ぎながら泣き虫の人間が好きで、好きで、恋しくてたまらなかったあのガキがねぇ~と笑いながら立ち上る。
「本当に…面白いよ。人間ってヤツは――よっ」 

 小さな火種は大きく育ち炎になった。総ては決められた奇事をなどるだけか…もう、眼帯は必要あるまい。
返答など微塵に期待してはいないが眼帯をゆっくりと外しながら最後の人間らしい質問をしてみた。
「闇のはらからで蝶は飛んでいたか?」

 謳う陽炎に調和せて部屋が、否、空気が震えた。鮮明になった陽炎の傷から痣から血が吹き出る。
 三人の闇も謳に反応して床を伝い、壁を天井を、装飾してある硝子の彫像や椅子・テーブルいや、過去の苦悶の後である爪痕・血痕ですら残さず飲み込む。
この部屋も又、一つの練成陣なのだ。

 我らが創造主が創られたもう一つの扉への路が現世に繋る――――――
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Categorie扉への路(F・A小説)
Genreアニメ・コミック Theme鋼の錬金術師

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