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2006’04.20・Thu

扉への路 4

 高慢・色欲・怠惰・嫉妬・強欲・暴食・憤怒
罪と謗られるその先に真理はある。
 それに捕われて尚、危うき境界線を外れる事なく渉からこそ人間は真理を求めながらも闇に墜ちる事なく進歩し続けてこられたのだ。

 今、逆巻暗闇と大罪を越え、現世の影より濃く、罪より鮮かに浮かびいずるこの路の真実が開かれる。

 これは現実ではない。
 これは幻ではない。

 過去に熾きたそれは影。
 未来に魅かれるそれは喰われる太陽。

 総ては因果の流れにあり。

 路は扉に向かって続いてるのではなく扉から続いている。
亡者の手が腕が、かつて存在た光ある場所へと伸びている。隙あらば現世の血肉を求めて足掻きたてる。

 炎の…、その力を奪われてなお残る力。
命と言う炎が消えぬ限り、命を喰らい生きる流れにいる限り、この灯は消えぬ。この火は絶えぬ。
自身から吹き出た炎が正にこの命の火だと気付くのは今更と言うべきか…。
 この身が生きる為にいったいどれだけの命が犠牲になったと言うのだろう…
命は命でしか支えられない。一つの命は数多の命でなければ生きられない。
死は誰かの生になる。だからこそ死者は生前の肉と魂と精神を持って生き返る事はない。この流れに背かぬ限り約束は未来で果たされる。

 陽炎が辿ってきた路がはっきりと浮き出てこの輪になった流れに逆らい扉へ翔ぶ蝶を蘇らせた。
何時か見たイシュヴァールの黒蝶であり、そうではないかもしれない。ただ分かるのは扉も又、一つではない。
 黒蝶は扉まで行っては翅をもがれ、脚をもがれ深淵へ墜ちる。
その度に闇が濃くなる様で、業を孕み深みを広げる様で、すべてをもがれた蝶はひよわな人間そのものに見て取れる。
 入口は違っても逝く着く先は無残な死だけが待っているのだ。

 無限と続く漆黒の闇が永遠と罪の嘆きと死の痛みを、生の恨みの呪祖を吐き続ける。
白い闇が淡々と訪れる黒蝶に死を与え、謳う声が呻きと重なり水面に広がる波のごとく映る影をうねらせる。

『来ないものか 来ないものか
陶酔のその時は
僕は我慢に我慢をしたおかげで一生忘れない
怖れもそして苦しみも天高く舞い立った
ところが悪い渇望が僕の血管を暗くした
ほったらかしの牧の草
生えて育って花が咲く
よい草も悪い草も同じ草
すごいうなりを立てながら
汚い蠅めが寄りたかる
来ないものか来ないものか陶酔のその時は―――』

 黒い闇が深々と死を迎え入れる。
 巨大で無限なこの闇に呑まれてしまえば無力な黒蝶よ、それも楽かと命の輪を見上げればソレを焼こうとする限りなく青い炎が静かに燃え盛るのを知り、性を放った一回一回の死があの部屋を訪れた際仕込まれた宝珠と反応していでたる影に気付いた。
ずくりと甘い痛みから思いだす。そう、内壁を擦りながら奥へ、奥へと簡単には出ないようにずっと攻められていた。その内にある紅い珠が鼓動と同じ、うねりと同じ速さで脈を打つ。
 総てはこの怪異の為。
 総てはこの奇跡の為。
 ここはあの壁に描かれた練成陣そのものではないか。

『待ち受けている魂よ
一緒に呟こうよ
空しい夜と烈火の昼の切ない思いを
人間的な願望から
人並のあこがれから
魂よ つまりお前は脱却し
そして自由に飛ぶという……
あらゆるものに縛られた
哀れ空しい青春よ
気むずかしさが原因で僕は一生をふいにした
心と心が熱し合う
時世はついに来ぬものか!』
   <ランボー詩集 地獄の一季より>

 幾千・幾万の声がずんと重く頭の芯まで響き耳鳴りどころか目眩がする。捩り込まれた悪意は悪夢から吐出した力を黐、臓器を締め上げあらゆる痛覚を荒らす。皮肉にも五体の感覚が戻りなんとかもう一度振り返り見た白い闇も黒い闇も、音も無く燃え完璧な円を描いているのを知る。
その橋渡しをしているのは総て人であったモノだ。が、どれも後少しのところで繋ってはいない。
 まだ命が足りない、死が足りない、炎が揺らめく。

――アカ いホの オ が足リ な・いイ

 総てが闇のこの世界で何者かが密やかに、そしてはっきりと……
これは警鐘。これは啓示。これぞ罪!!

――ミよ、コレを魅よ。

 決して許される事のない第八の欲望の形がこの国の四方を炎で囲む。
―――タナトス
破壊欲動、死の本能。
 誰の中にも潜む最大の罪を形にして炎が揺らめく。

「罪に煽られた炎こそ魂の有り様。」
――おめでとう。君は選ばれた存在なのだよ。
「糞が、もったいつけねぇでさっさとてめぇが魅た扉とやらを教えろっ」
――ホノオの称号を与えられた者のこれは運命。
「すばらしい!すばらしい火をお持ちね!大佐。」
――産まれたその瞬間からこれは決まっていた事なのだよ。
「何処に扉があるんだよ?ん?」
「羽化は完璧なはずだが?」
 ぐるり四方から、罵声に似たあの三人とは別に低く且、穏やかな声が更に諭す様に頭に響く。

――よく、ここまで育った。君こそが紅い炎。
見たまえ、あの黒い炎を。
あれは私の憤怒の火だ。
そして、あの白い炎。アレも私の育てた炎だよ。
アレこそ絶望。

 絶望?憤怒…―――知ってる。私はアレを知っている…。

「いかないで………大佐…」
 炎に、否ソレはもう記憶も感情も燃やし尽くすこれこそ業火。激情に流され言葉にならぬ程の怒りは総てを、血の一滴を、この痛みですら逃るる事は敵わない。
 魅入られ命の火から抜け落ちそうになる身体を誰かがしっかり掴むは一人や二人ではない。しっかりと掴まれた腕のその向こうで誰かの溜め息混じりの飽きれた声が聞えた。

「ヤレヤレ……まさか死んでからもお前さんを助けるとは…な…」

? そんなっ

 祈るその人は我が手で墜としめた部下。
引き寄せる懐かしい顔はあの日から時間を止めたままだ。
 迷いと後悔、懺悔の念がひどく蘇孵った路の残存を歪がませる。

 この命を延々と受け継がせて来た先人よ、戦場で散った友よ、思い半ばで逝った大切な人よ…、どんなに魅かれ魂が奪われ様がここから先には逝く事はない。永遠と罪を許される限り。そこが自分の存在世界な限り。
僅かな細いこの路を歩き続ける限り。

そうだ。私は…
私の名は――――

「はーっ、はっはっはっ!だからニンゲンは駄目なんだよっ」
「嫌だわ…影像がボケてきたじゃない。」
「自我が目覚めたとたんがコレか……なんたる脆弱!」

 罵りの言葉はもう届かない。何に引きずり込まれたのかそこから意識がぶつりと切れた。

「どうされます?」
 床に手を付き三人が恐れ敬う様に頭を垂れる。彼らの創造主にお伺いを起てる為に決して付く事のない膝を折る姿は神への祈りに似ている。

――苦悩に矛盾、葛藤……罪の誘惑…アレにはもっとたぎってもらわねばな。

「陽炎は予定通りに。」
理の中、物質世界では限界の壁がある。それでも………
――紅い炎は難しいぞ?

 火傷など何時ぶりだ……するりと手中から飛び立ったホノオに確かな手応えを感じて下から沁み出る声がからかうのか楽し気だ。
 問い掛けに部屋の主が険のある顔をスッと緩ませた。
「開けさせましょう。幸にもあの女も扉に立った様ですし。」
 彼等の後ろには男女対の裸体が横たわっている。体に懸かった負荷が痙攣を起し浮き出た血管が波打ちその苦痛を。血が、涙と同じ軌跡を描いて、爛れた皮膚が、求め伸した手が、夢ではないと叫びをあげている。
 些か損傷はしているがあの様な体験をしても尚生きて還っているとは……。
「体の保持はどーすんだよ?これ以上の力だと維持できねぇぞ?」横槍を入れる兄弟の言う事は正しいかもしれない。陽炎でさえ現世での肉体は亡くした。―――だが…。
「記憶を細工して頂けたら…いかようにも。」
 再び頭を深く垂れた。ホノオの二つ名を与えたのはどうやら当りの様だ。もっと煉れば陽炎以上の力と混沌が育つはず。
そうだ、もっと混乱を。もっと怒りを。もっと罪を!
細めた右眼が微かに笑っている。それと同調したか沈黙も笑っていた。

――まかせよう。

 コレも我が意思。
一度炎となり路も後僅かで繋がる今、誰もタナトスは止められない。この国にいる総ての人間にソレが一気に増幅し内に向ったならば…!

「ハッ!ハッハッハッハー クックッ…ヒィーヒッヒッヒッ……地獄の再来だっ!」
一人が感きわまって狂ったかの様に肩を否、全身を震わせながら笑い出した。
 残るは砂漠のみ。神は地に墜ちて人が人を殺す最高の時が満る。抗え人間!光を持った人間の絶望程甘いモノはない。そして罪を繰り返すのだ。
黄昏時から夜へ、闇の時世はもう、すぐだ。
「混沌を。」
「我らがお父様に。」
「楽しいパーティの幕開けだ。」

 涙が止まらない。夢にすら逢えなくなった愛しい人よ……もうすぐだ。
これは人間だった時の最期の証。熱き心のあった証。
だが今は疲れた眼球の生理現象にすぎない。
 顔など忘れた。
 声など覚えていない。今、ここに立たれてもそれが何者かすら分からない。何の罪で裁かれているのか……それすら記憶えていない。――そう、心はもう…
―――ない。

 冷気を孕んだ長い息が独り言と共に漏れた。
「私のホノオよ……おいで…。」

<END>
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Categorie扉への路(F・A小説)
Genreアニメ・コミック Theme鋼の錬金術師

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comments

ご苦労様でした。
巨匠!まとめてサイトにUPするのはいかが?
電薔…更新停止状態さ!

貴方の作品を待っている

ポンチ:2006/04/25(火) 00:10 | URL | [編集]

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