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とあるカポーの墓参り(←色気ないタイトル・・・)


「俺は絶対長生きする」

口説き文句はこれだ。もう7年前に決めていたよ。
アニキから掻っ攫おうって、アンタと勝負しようって、逃げないって決めたのに、勝手にバックれやがって!

くそっ。

毒づいて蹴飛ばそうと思ったそれ。
でもできなかった。
そこには真新しい白い大輪の百合が楚々として両脇に飾られていて、これを生けたのが誰だか、わかってるだけにできなかった。
あんな奴に、こんな上品な花…菊でいいんだよ、菊で。
そっと、花弁に触れてみた。花には罪がない、でもアニキは罪深い。

あの人を、置いていったから。

どう足掻こうと年の差は埋まらない。
どう頑張ろうと思い出には勝てない。
その思いを7年も引きずってきた。
あの人は、アニキの姿形に似てる俺を手元に置くことで自分を保とうとしてる、と思う。それも俺の気持ちには多分いや確実に気づいていながら。
それはとても卑怯で残酷だと思うけれど、アニキが居なくなってどれだけ嘆いて苦しんで、体を壊したか現実から逃避しようと自分を害したかを知っている俺はアンタを恨みこそすれあの人を罵倒することはできなかった。あの時、すぐに帰ってくると行って出かけたアニキは帰ってこなかった。そりゃ、アニキもそうなるとは思ってなかったろうけど何か重要な約束をしたまま相手に期待だけさせといてそれを果たすことができずに永遠にさよなら、そんなのはひどすぎる。
どんな約束だったのか、知らないしはっきりとは教えてはくれないけれど想像は付く。そしてそれがきっとあの人を一生苦しませるのかもしれない。

まったく、腹が立つ!

この時期になると、思い出す。
秋晴れの空の下、俺の田舎のあぜ道に群れて咲く彼岸花。それはその毒々しいイメージのまま、俺の心に妬きついた。
赤い血の花の葬列のように一列に並ぶ地道の上を走る黒塗りの車から、俺はくず折れるあの人を見ていた。
何人かの友人に支えられて、焦点の合わない目は真っ赤でただ流れ落ちる涙を拭おうともせず、薄く開いた唇からアニキの名ばかりを呟くその口元に。
俺は打ちのめされた。
でも綺麗だった。

もう7年経つ。

夕暮れにさしかかろうとする空を見上げた。
うろこ雲、涼を運んでくる風。手を翳して太陽を見た、西日はまだ夏の日差しだった。
大らかだけど不器用で、明るく清清しいまるで太陽のように眩しい人だった。
俺とは、まるで違う。
(いくらアンタでも、自分がいなくなったあと俺があの人を抱くのは業腹だよな)
そんな自嘲とともに、目の前の墓石に触れた。
でも、譲れないと心に決めている、もう今の関係がなくなっても、永遠に彼をこの腕に抱くことはできなくてももうけじめをつけるべきだ。
(後釜よろしく納まってた俺をアンタは笑うかな、いや恨み言をぶつけられてるのかもな)
あんたが残したアレを、きちんと渡すべきだ、と決心が付いたからだから来た今日は。
(渡しとくぜ、そしたらアンタまた、泣かせるんだぜきっと。でも今まで隠してた俺もたいがい、卑怯だな)
そう思いつつも神妙にその墓前で手を合わせた。
できる事なら、俺を許してくれ、と知らず祈った。
そしてあの人をくれと、心から願い、アニキの次でもいいと本音を吐露した。
死んだ人には敵わない、のだ。


風に飛ばされたイチョウの葉っぱが時折落ちていた、墓地から寺の境内に続く道を殊更ゆっくりと進んでいると見慣れたシルエットが墓地の入口に立って驚いた。
白皙の顔に地毛だという明るめの茶髪、肩までのびた細くて柔らかい髪が風に揺れている。
「切らないとね」といいながらなかなか切らないその髪型、似合ってるけど似合ってないって言いたい、まあ今日は命日だからアニキに免じて止めとこう。
好きだったみたいだからさ、この髪型。
「お話、した?」
小首を傾げて儚く笑う、とても7歳年上の三十路とは思えねえ。
「…まあ、恨み言を少々」
「いつもそれだね、君は」
「まあね」
境内を肩を並べて歩きながら言葉を交わす、何時もの憎まれ口も今日はないようで。
「でも、今日来たのは初めてじゃない?」
ああ、命日にこうしてここにきたのは初めてだよ、薄情な弟だろ?…なんとなく、これなかったってのも、あるけどな。
「なんの心変わり?」
20cmほど低い身長、下からの覗き込んできてそう訊く、年齢にそぐわない無邪気さで。
「別にそうじゃない、今日は来る必要があったと感じただけ」
「ふ~ん」
気もなさげに相槌を打って視線を外す。その気のなさに俺はアレを渡すならやっぱりアニキの墓前でと思い当たった。
「こっち来いよ」
手を引いてずんずんと来た道を引き返す、「わ、ちょっと待って」石畳に突っかかりながらも引っ張っていったアニキの墓へ。そこで止まるとぶっきらぼうにポケットの中のそれを差し出した。

「もう、これを渡してもいいかと訊きに来た、7年。アンタにとってどんな年月だったかは、訊かない」
ビロードの掌サイズのそれを差し出すと恐る恐る手にとって開けたその手が少し震えてた。
「今まで、隠しててごめん。アニキの遺品からでて来た。きっとアンタへあげるつもりだったんだと思う不器用なアニキの想いが込められてるんだと思う」
頭を下げた。
彼はその箱を開けて、それを取り出すと兄貴の眠る墓標を見る。

目を眇めて指で転がす銀の小さな輪、予想外に彼は泣いたりしなかった。


「──そうか、7年」
かみ締めるように言った。
「はや…かったな」
瞳を伏せて呟く、懐かしんでいるのか、アニキとのいい思い出に浸っているのかはわからなかった。
「君といる様になってからは、とても早かった」
確かにそういった。そして次に見せたのは、伏せた瞳をきりりと上げて俺を睨むかのようにまっすぐにそらさない視線でそれでいて熱っぽい。
蠱惑の眼。
隠していた事を責めるような気配はなく、俺が心に溜めているものを言えと促す瞳。
そうだな、ここで言うのがいいのかもしれない。
アニキの前で。

「俺は、アンタを置いて死んだりしない、絶対長生きするから」
「うん」
「これからは一緒にいて欲しい」
今まで重ねた体とか、吐息とか、それはきっと俺であって俺でなくこの人にとってアニキの代わりだろうから、これからは俺を見て欲しい。
その願いを込めてそう告げた。

「これからも、だろ?」
持っていた指輪を小さな箱にしまいながら、こともなげに帰ってきた言葉、それはとてもシンプルで明快だった。

「…うん。もう君のお兄さんとのことは僕には思い出なのかもしれない。大切な思い出、変える事のできない過去で関係だった。だからこの指輪も嬉しいけれど、彼の想いが伝わってきて心は温かくなるけど僕にはもうその気持ちを返せないんだよね今となっては」
嬉しさを受け取る人がいない、そういうことなのだろう。あのアニキの死で空しく死人との対話を繰り返して追いかけていこうとしたこの人を何度も引き戻したのは俺で。
俺は何も言わなかったけど、そばについていることしかできなかったけど、きちんとこの人を見ていた。目をそらさずに。
「それを教えてくれたのは君だしね」
そうなの…か?俺はちゃんとあんたの力になれたんだ。姿の似た俺じゃ辛くなかったかなあ、といつも思ってたけど。
そんな風に考えてると、ふぅ~とあきれたようにため息をつくのが耳に届いた。
「まあ、無理も無いけどさ、勘違いしてるようだから言っとくけど君を彼の代わりだと、思ったことはないよ?」
え?
「だって、無口だろ、無表情だろでも人の気持ちには敏感で、やることは大胆なくせにここぞというときにはヘタレるだろ?てんで違うし」
あ~。
「僕を抱いたのも、僕が迫ったからで、本当は順序を踏みたかったんだろ?」
はい。本当はちゃんと告白してOKをもらってからと思ってました。けど体の暴走には負けました。
「真面目なんだよ…、待ってられなかった。まあそんなとこが可愛いよ、そういう君に嵌ってるかもね」
は?誰が190cmの大男を捕まえて、可愛いたぁ何事?
「健気に僕を、この現実に引き止めてくれたその責任はとるべきだね、そしてちゃんと長生きしろよ?」
まあ、僕より7つも年下だからそんなのはあたりまえだよ。と毒づきながら小突かれた…。
横目で見上げれて、
「過去を抱えたまま僕でいいんだろ?」

それがあるから好きなのだと、頷いた。


ふたりで、お墓に手を合わせた。

遠い空で見ているかもしれない、アニキ。彼はどんな思いで手を合わせただろうと考える。
大切に胸に抱えた小さい箱。
その胸に秘められた思い出とともにきっとこれからも歩んでいく。
これからも二人で。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ええと、長くてごめんなさい。難産もいいとこ、パターン王道で失礼致しました。というか何故年下攻め???好みじゃないはず。
しかしうまく短く纏まりませんでしたなあ・・・。はぁ、勉強します。
勝手にシリーズ化しましたが、今年3月からBLOG上で色々なカップルのワンシーンをBLOGの月一お題で書いていますSSです。興味がありましたらHPへ。3月分から順次公開中です。
(ぴかり)

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Categorie9月お題『彼岸』

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comments

体でかっ
ながらも墓場で告白グーで私には辿着けなかったシチュエーションでした。(本当は墓前でドタバタのはずが車内になったんだな)彼岸花もでて彼岸ぢゃの~明日はこっちが墓参りだ。

ぶいぶい:2005/09/23(金) 18:10 | URL | [編集]

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