--’--.--・--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

- - TOP
Categorieスポンサー広告

『Monster's prince in Halloween』  (by 円茶)

「坊ちゃんは?」
 狼男は鍋をかき混ぜる手を止めて居間を覗き、そこに居たドラキュラに尋ねた。窓から覗く今夜の空は三日月であるし、食事の支度をしている今は、もちろん人間形をとっている。
 体格が良く、茶褐色の髪が伸ばしっぱなしの無造作さで肩にかかり、ジーンズとシャツの着方もだらしなく、どことなくあか抜けない。ただきりりと締めた白いエプロンだけがやけにまぶしい男だった。

「お友達のヒロシとお出かけになった。最近は日本でも万聖節の祭りをやるらしい」
 ドラキュラはいつもの黒服で髪もきっちりと撫で付けている。青白い顔色の眦の鋭い美青年だが、癇性に眉間をしかめたままである。

「フランケンが護衛に付いて行ったから大丈夫だろうが…それにしても人間どもと馴れ合うのはいかがなものか。ことに」
 ドラキュラは弁舌を切り、マントを翻すと腰に手を当てて憤然と狼男を睨み据えた。
「あのヒロシとは近づき過ぎる。婚約者であるカイ子様をさしおいて、次期王妃の座を狙っているのではないか?」
「王妃って…おい、一応あの子は男なんだがな…」
 狼男はめまいしたように額を押さえ、厨房へ引き返す。オーブンからパンプキンパイのいい香りが漂ってくる。チキンソテーにかけるソースの煮詰まり具合を見て火を止める。

「男だろうと油断も隙もあったもんじゃない。坊ちゃまをたらし込んで、魔界の偉大な力を手に入れんと狙っているに違いない。男になるも女になるも、坊ちゃんの思いのままだと囁いて、秘術を聞き出すつもりだろう」
 ドラキュラは、町内子供会のどこかの家を訪ね歩いている姿が見えるかのように、屋敷のドアを振り向いて身震いする。
「はあ、それで?」
 厨房の奥から気の無い返事が一応は返ってきた。水音と冷蔵庫を開け閉めする音が聞こえる。 

「だいたい人間というのは不遜なものだが、ハロウィーンが何かわかっているのか? 浮かれ騒ぐためではないぞ。いにしえにおいては、人ならざるものへの敬意が込められていたものだ。それが今はどうだ!? いや、私は将来の王たるもの妾や小姓を持つのは、たしなみとさえ思う。しかし、日本人はいかん。クリスマスもハツモウデも一緒くたではないか。それが我々、魔族に敬意を払うようになるとは思えん」
「…そういう人間も居るがなァ…ヒロシは大丈夫だろう。いい子だ。それに、お前がその敬意とやらを教えてやればいい。お役目だろう?」

 再度、狼男が厨房から出てくると、手に赤い液体が入っているグラスを持っていた。ドラキュラにソファに座るように促して差し出す。キャラクターの絵がついた子供向けのグラスだが、口元へ近づけると微かにアルコールの香りがした。
「優れた方だが坊ちゃんはまだ子供だ。ゆっくり見守っていけばいい」
 狼男もエプロンを取って隣に腰を下ろすと、軽くドラキュラの肩を叩いた。

「お前の作るブラディ・メアリーは美味いな。もうご馳走は作り終えたのか?」
「ああ、終わった。後はお帰りを待つばかりだ」
 ドラキュラは一口飲むと目を細めて味わった。唇だけに血の気がさし、吐息が漏れる。
「お前は素晴らしい料理人だ。坊ちゃんのお側に支えるにふさわしい。フランケンも、言葉は少ないし一見無骨な男だが、あれでいざ動く時は頼りになる。…私は何ができるのだろうな。魔界のプリンスとしての身仕舞いをお教えしようにも、あの方は私ごときが口を出すまでもなく聡明であらせられる。ヒロシのこともお考えがあってのことだろうか」
 グラスを煽って喉を鳴らす。狼男は少し眉を潜めて、動く喉元から目を逸らした。

「私ときたら、得意は深夜の夜空をふらつくぐらいが関の山だ。せめて使えるのは血筋(コネ)程度のもの。父王様と袂を別つ折にでもお命じ下されば、恐れ多くも弑逆奉るだけの軍を集めて差し上げられたのに」
「おいおい、酔ったか? 物騒なことを言うなって。聞かれたらどうするんだ。そこらに手の者がいるかもしれねぇぞ」
 狼男は俯くドラキュラを横から覗き込み、慌ててグラスを取り上げてテーブルへ置いた。
「人間界へ来てからというもの、坊ちゃんがどんどん大人になってゆかれるようでな……。いまにご自分の手で何もかも手にお入れになるに違いない。実はフランケンも要らぬとおっしゃるのを、私が無理やりついて行かせたのだ。昔は我ら3人でお供したものだが」

 ドラキュラは寂しげに笑って、仰のけてソファに凭れて目を閉じた。狼男は、仰け反った喉を締めるマントの結び目を解いてやると、そのまま指を顎の線へすべらせる。
 逆に血を吸われるのにふさわしいような滑らかな肌に、狼男は牙を食い込ませたい衝動に駆られたように鼻に皺を寄せて鋭い歯を覗かせた。
「坊ちゃんにはまだお目付け役は必要だし、教育係はそうやって心配するお前以外にできる奴はいない。俺やフランケンのように、大雑把な奴ばっかりじゃだめだ。あれこれ考える奴がいなきゃだめなんだ」

 狼男は身を寄せてドラキュラの耳元へ囁いた。ドラキュラは顔を腕で隠したが、そっと取り払われても抵抗はしなかった。
「俺たちも、お前が居てくれなきゃ困る。魔界の連中とかとの…駆け引きには、疎いからな…」
 ドラキュラは額を撫でられると瞼を開いて、いつの間にか間近にある狼男の顔を見詰めた。精悍な顔が情動を抑えようとして口元を歪め、物騒な笑みを浮かべていた。
「…嘘をつ…け」
 喉元を強く吸われてドラキュラは言葉を無くした。再び視線が絡まると濡れた紅い目で見詰め返す。狼男は息を呑んでドラキュラの顎を取りゆっくりと顔を重ねていった。

「Trick or Treatォォオオオッー!!!!」
 怪物王子の叫び声と、ドアを開け放つ音が響き渡った。

「おい、狼男! ごちそうの用意はできているか? ドラキュラ! オレの部屋はキレイになっているだろ…う、な……」
 目がしっかりとソファの上の2人を捉えている。歓声とともになだれ込んで来た子供達は、王子の伸びた腕に阻まれるまでもなく、王子と同じモノを見つけて部屋の入り口で固まっていた。
 
 まず、のっそりと狼男が身を起こして、黙ったまま厨房へ消えていった。王子は腕を戻すと友達に来いと身振りで示し、何事も無かったかのように階段を上がっていく。子供達はちらちらとドラキュラと厨房を見比べたりしていたが、王子の癇癪声に急き立てられて2階へ駆け上っていった。
 最後にフランケンが部屋へ入り、玄関のドアを閉めた。王子たちが近所でせしめた山ほどのお菓子を持っている。ソファの横を通り過ぎざま、ふと足を止めると物言いたげにドラキュラ目線を送った。

「何だ…?」
「首。ついてるぞ」
 フランケンは低い声でぼそりと呟くと、まだ頭の回らないドラキュラを残し王子を追って消えた。2階からは無邪気な笑い声が聞こえてくる。
 その階段から王子が伸ばした手がやってきた。ドラキュラに紙切れを落として、また元へ戻っていく。

(慣れているから気にするな。それよりメシを早く持って来い。ヒロシが居るからキスマークは隠せ)
 ドラキュラは静かに立ち上がると厨房へ入り、狼男に紙切れを差し出した。

「やはり私は必要なようだ。この家は乱れきっている。規律が必要だ」
 咳払いし、ごく平静な声で言うとマントを着なおす。しかし、はらりと額に落ちかかる髪をかきあげ、狼男を見上げた目は焦点が合わず、据わっていた。

「魔物が活動するのは夜だ、夜中だ、深夜だ。何が悲しゅうてニュー・ファミリーな団地に屋敷を構えて住まにゃいかんのだ。化け物なら墓地だ。お前は人里離れた山だ。そうだ日本アルプスへ行け。八甲田山でもいい。廃墟だ。廃墟ツアーだ、軍艦島だ。棺桶だ、棺桶をよこせ!」
「お、落ち着け。悪かった。ほら、坊ちゃんへ料理を届けないと。な?」
 鍋の蓋を開けて湯気の上がる料理を見せてみる。銀盆に並んだオードブル、フルーツ、ケーキと、所狭しと収められた冷蔵庫をも見せると、ドラキュラは天井越しの2階を見上げ、いくばくか落ち着いたらしく肩が荒い息で上下した。

 狼男はにっこりして背を向け、冷えたジュースを取り出して運ぶ用意を始めた。だが、ドラキュラの息遣いを聞くと、つい思い出して口の中で呟かずに居られない。
「でもお前もあんな無防備になるから悪い…」
「どの口だ」

 背後から厳しい声が飛んできた。いつの間にかドラキュラの手に拳銃が握られていた。もちろん銀弾装填済みだろう。狼男の胸へ突きつけ、流し台へ追い詰めた。
「聞こえたぞ。どの口だ。坊ちゃんに悪影響がないように、しっかり 潰 し て やろう。私は王子をお守りせねばならんからな。例え同じ魔族だろうと、邪魔するものはやっつける。坊ちゃんのためならエンヤコラだ」
「……こういうやっつけ方は…アリか?」
 ドラキュラは取り合わず、銃を狼男に当てたまま、唇へ軽く噛み付いて言葉を塞いだ。

 ソファでの行為の続きを始めた狼男とドラキュラは、体格に似合わずひっそりとやってきたフランケンが、呆れたような溜息を付いてオードブルの皿を運んで行ったのも、痺れを切らした王子の手が料理を浚っていくのにも気づかなかった。
 
「おい…っ、言う事と行動、が…」
 狼男が口吻けの合間にぼやくと、ドラキュラはゴリ、と銃口を食い込ませて微笑んだ。
「黙れ。これが怪物の教育法だ」


end
どたばたギャグで終わらせるはずが、甘くさくなってしまいましたがーーー。

アニメを見たのも遠い昔なので、設定がおかしいところはごめんなさい。

王子のセリフは全部、太フォント、中文字でやりたかったくらい(笑)

なお副音声、妄想画像でお楽しみください。フンガー!
スポンサーサイト

トラックバック(0) コメント(2) TOP
Categorie10月お題『ハロウィン』
Genreアニメ・コミック Themeボーイズラブ

Next |  Back

comments

ウォーでやんす。
で、あの絵で××する私…やったね。最高だよ!で、はやりヒロシは狙ってるのか!?(笑)

ぶいぶい:2005/10/30(日) 18:09 | URL | [編集]

素晴らしい、ドラキュラが耽美ってる・・・!
その上
>婚約者であるカイ子様をさしおいて
・・・知らんかった、つか良く覚えてたな・・・。勉強になりました。

ぴかり:2005/11/04(金) 09:07 | URL | [編集]

Post your Comment











 管理者にだけ表示を許可

trackback

この記事のトラックバックURL


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。